第2話
あなたは奥の間にひとりで寝ていた。あなたの同い年の妻は五十年近くあなたの言いなりだった。何の文句を言うことも許されず黙ってあなたに仕え続けた。そんな従者のような妻を歯ぎしりがうるさくて眠れないとか言ってあなたは部屋から追い出した。妻は隣の部屋で寝ている。そいつを呼ぶしかない。あなたはそう考えて呼ぼうとした。
しかし言葉が出てこない。あなたは焦った。隣にいる不肖の嫁を呼びつける言葉が出てこないのだ。
唸るようにのどを震わすと声らしき音は出る。何だか獣の威嚇のようだ。あーとかウーとか唸った後に言葉が出てこないのだった。
それまでも言葉が出にくいことはあった。しかしたいてい、あれだ、あれ――といった言葉が出て相手に察することを強要できたのに、それすら出てこなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます