諦める為の準備期間……ほんとは今でも君が好き♡だけどもう解放してあげなきゃ

熊井なほ

プロローグ

 ──好きな物──

 *マカロン・メロン・チョコレート♡

 *化粧ポーチの中でメイク道具がぶつかり合う音

 *冬の夜の凛とした空気

 *カラオケ・可愛い絆創膏・高校野球etc……


 好きな物はたくさん、た〜くさんある。

 だからさ、別に君だけじゃないんだよ。


 でも本当はさ──

 君の事、好きになりすぎちゃったんだよね。

 好きすぎて苦しくて辛くなっちゃった。


 だけど──

 今は好きな物、た〜くさんあるから、君だけを想っていた時とは違うんだよ。


 君の事を想う心の隙間はもう無いんだ。


 だから、君を諦める事にしたんだ。


 だから……だから!

 もう、私から解放してあげる。


 でもね──

 ずっとずっと好きだったから、すぐには無理だよね……。


 だから──

 これからの1ヶ月を君を諦める為の準備期間にします!

 ってなんの宣言⁈


 あ、好きな物の中に高校野球入っちゃってる……。


 こんなんで、私大丈夫かな?


 しっかりと諦めて、解放してあげれるのかな……?


 ***


 ──中3夏──


 朝のテレビのニュースでは、今日もこの夏の最高気温を更新するでしょう。と可愛いお天気お姉さんが灼けるような陽射しを浴びながら伝えている。


 今日の午後からはお母さんに半ば強引に入れられた塾の夏期講習に行かなきゃいけない。


 先週のバスケ部最後の大会は準決勝で負けてしまった。


 まだ頭も身体も勉強モードに切り替わらない。

 よし! こんな時はあそこに行こう!


 小さい頃から、地元の古いバッティングセンターによく行っていた。

 全く野球に縁はないんだけど。


 向かってくる白いボールに無心にバットを振って当たった時の爽快感は半端ない。


 カードを差し込んで、ヘルメット被ってバッターボックスに立つ。

 1球目……空振り。

 まあ、久しぶりだからね。

 2球目……後ろに飛ぶ。

 まあまあ、当たったからよし。

 3球目……空振り。

 ……。

 4球目……あえなくまた空振り。

 

 その瞬間──

 隣のボックスから

「3ストライク! バッターアウト!!」

 突然のことに唖然とした。


 私のボックスでは次のボールが投げ込まれてきていた。


「え?! ちょ……なんですか? 急に?」


「あ、ごめんごめん……!! 気合い入った顔でボールを睨みつけてたから、見入っちゃった」


「だからって……突然しつ……」


「ほらっ! 今のタイミング! はいっ! 集中して!」

「はいっ! 今バットを下からすくい上げる感じで!」


 カキーン!!

 当たった! しかも白球は一直線にネットに貼られたホームランのボードに向かって飛んで行った!!


 ホームラン賞でもらった景品のアイスをベンチに座って食べながら、隣のボックスを見てみた。


 さっきの男の子? 男の人? がバットを振りもせずに、向かってくるボールを見ながらぶつぶつ言っていた。


 変な人〜。ま、おかげでアイス食べれたんだけどね。


 今思えば、これが私"星野夏那" と君こと"円城寺冬馬" の最初の出会いだった。

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諦める為の準備期間……ほんとは今でも君が好き♡だけどもう解放してあげなきゃ 熊井なほ @kuruminchi

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