第35話創造 ――官兵衛、起動
管理室の中央に、
静かな円環が展開される。
光は、
強くない。
祈りも、
詠唱もない。
ただ――
工程があるだけだ。
《補助存在:創造開始》
《名称:官兵衛》
《設計準拠:第六柱提出案》
《最終承認:管理者》
俺は、
一瞬だけ
指を止める。
「……始める」
それだけで、
十分だった。
円環の内側に、
概念が流れ込む。
情報。
確率。
失敗例。
最悪の未来。
希望は、
最後だ。
まず――
負け方を教える。
信長は、
腕を組み、
一切口を出さない。
濃姫は、
わずかに
目を伏せている。
天照大神は、
円環を
真っ直ぐに見つめていた。
光が、
人の形を取る。
だが――
完全ではない。
輪郭が、
意図的に
曖昧だ。
性別も、
年齢も、
象徴に過ぎない。
「……」
その存在は、
まだ
言葉を持たない。
《起動準備:完了》
《思考系統:オンライン》
《制約確認:全項目有効》
最後に――
恐怖を入れる。
誤れば、
世界が歪むという
理解。
それを、
知識ではなく
感覚として。
円環が、
静かに消える。
立っていたのは、
一人の存在。
視線は、
既に
管理室全体を
把握している。
「……起動を確認」
低く、
抑えた声。
感情は、
薄い。
だが――
空虚ではない。
「補助存在、
官兵衛」
俺は、
名を呼ぶ。
「状況を」
一瞬。
官兵衛の視線が、
管理席に向く。
「管理者は、
過労域から
回復途中」
「判断分散率、
未だ不足」
「同様の事象が
再発すれば、
三回目で
致命」
容赦がない。
信長が、
口角を上げる。
「よい」
「無駄がない」
官兵衛は、
信長を見る。
だが――
一切、
頭を下げない。
「提案者、
第六柱」
「あなたの行動履歴は、
合理的だが
感情に依存」
「再発時は、
別案を提示する」
信長は、
一瞬
目を細め――
笑った。
「……面白い」
濃姫が、
小さく息を吐く。
「嫌な子ですね」
「それでいい」
天照大神が、
静かに言う。
官兵衛は、
再び
管理者を見る。
「命令を待つ」
俺は、
一拍置いてから
答えた。
「命令は、
まだ出さない」
「まずは――
見ろ」
「世界と、
俺を」
官兵衛は、
一瞬だけ
沈黙し――
頷いた。
「了解」
「観測を開始する」
《補助存在:官兵衛》
《状態:稼働中》
管理室に、
新しい気配が
定着する。
それは、
力ではない。
知恵でもない。
歯止めだ。
信長が、
低く言った。
「これで、
お前は
一人ではない」
俺は、
画面を見る。
世界は、
相変わらず
静かだ。
だが――
この静けさは、
もう
一人で支えるものではなかった。
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