第34話設計 ――第六天の軍師
管理室の中心に、
新しい設計領域が展開される。
《補助存在:設計フェーズ》
《分類:管理室内専属》
《提案者:第六柱》
信長は、
そこに立った。
珍しく、
武器も威圧もない。
あるのは――
構想だけだ。
「軍師とは、
知恵袋ではない」
信長が、
淡々と語り始める。
「先を読む者でも、
策を巡らす者でもない」
俺は、
黙って聞く。
「軍師とは、
敗北を回避する存在だ」
「勝ちを誇るのは、
武将の役目」
「だが、
負けを防ぐのが
軍師よ」
設計領域に、
いくつかの概念が
浮かび上がる。
• 情報過多の整理
• 判断遅延の警告
• 感情介入の検知
「……感情?」
俺が、
問いを挟む。
「管理者は、
感情で動く」
信長は、
即答した。
「それ自体は、
悪ではない」
「だが――
感情に
気づかぬまま動くのが
一番危うい」
濃姫が、
静かに頷く。
天照大神は、
視線を落としたまま
何も言わない。
信長は、
設計を続ける。
「この軍師に、
忠誠は不要」
「必要なのは、
役割への執着だ」
「主が誰かではない」
「“戦を崩さぬこと”
それのみ」
設計領域に、
制約条件が刻まれる。
《制約》
・世界への直接干渉不可
・柱への命令権なし
・管理者の決定を上書きしない
「……それで、
機能するのか?」
俺が言う。
信長は、
薄く笑った。
「機能しないなら、
それまでよ」
「だが――
お前はもう知っている」
「一人では、
処理しきれぬとな」
痛いが、
否定できない。
設計領域に、
新たな項目が
浮かぶ。
《性格傾向:冷静/無感情》
《思考形式:確率・最悪想定優先》
《口調:簡潔/遠慮なし》
濃姫が、
わずかに眉をひそめる。
「……嫌われますね」
「構わぬ」
信長は、
即答した。
「軍師は、
嫌われてこそ価値がある」
天照大神が、
ここで初めて口を開く。
「一つ、
条件を追加せよ」
信長が、
視線を向ける。
「申せ」
「その軍師には、
恐怖を持たせよ」
管理室が、
一瞬静まる。
「恐怖?」
「己が誤れば、
世界が歪むという
理解だ」
「それを欠けば、
判断は
いずれ独善に変わる」
信長は、
少しだけ
考え込み――
頷いた。
「よかろう」
《追加特性》
・自己判断への不安定性
・誤判断時の負荷フィードバック
設計が、
ほぼ固まる。
俺は、
管理席から立ち上がり、
設計領域を見る。
「……名前は?」
信長は、
少し考え――
短く言った。
「官兵衛」
濃姫が、
小さく息を呑む。
天照大神は、
何も言わない。
だが――
否定はしなかった。
《補助存在:官兵衛》
《状態:未創造》
《創造待機》
信長は、
俺を見る。
「創るか、
否かは――
お前が決めろ」
管理者。
その席に、
再び重みが戻る。
だが今度は――
分かち合える重さだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます