第32話対話 ――管理者と第六天
管理室の空気は、
静かだった。
だが――
緊張はない。
俺は管理席に座り、
正面のモニターを
一度だけ確認してから、
視線を横に向けた。
「……世話になった」
率直に、
そう言った。
織田信長は、
壁にもたれ、
腕を組んでいる。
「礼などいらぬ」
「倒れた者の盤を、
崩さぬよう
触っただけよ」
いつもの調子だ。
だが、
どこか――
慎重だった。
「……禁を、
分かってて動いたな」
「当然だ」
即答。
「分からずに動くほど、
愚かではない」
少し、
間が空く。
「……止めなかったな」
俺が言う。
信長は、
口角をわずかに上げた。
「止めれば、
お前は戻らぬ」
「倒れてなお、
一人で背負おうとする」
「それは――
管理ではない」
胸に、
刺さる。
反論できない。
「……代わりを、
やる気は?」
試すように、
聞く。
信長は、
鼻で笑った。
「冗談を言うな」
「我は、
勝つために裁つ者だ」
「世界を均すなど、
性に合わぬ」
それでいい。
それがいい。
「……でも」
俺は、
画面を操作し、
一つのログを表示する。
《第六柱:配置調整》
《影響評価:適正》
「この判断は、
助かった」
信長は、
一瞬だけ
視線を逸らす。
「……無様な負けを、
見たくなかっただけだ」
「お前は、
まだ
戦を終わらせていない」
その言葉に、
俺は小さく笑う。
「……随分、
買われたもんだ」
「違う」
信長は、
こちらを見る。
「見ているだけだ」
「価値があるかどうかは、
これから決まる」
重いが、
嫌じゃない。
「……これからは」
俺は、
管理席に
深く座り直す。
「判断を、
分ける」
「一人で、
全部はやらない」
信長は、
黙って聞いている。
「だから――
次も、
頼るかもしれない」
数秒。
信長は、
肩をすくめた。
「気が向けばな」
「だが、
覚えておけ」
「我は、
お前の部下ではない」
その言葉に、
俺は頷く。
「……知ってる」
「それでいい」
信長が、
踵を返す。
「次に倒れれば、
今度は
もっと踏み込む」
「その覚悟は、
持っておけ」
去り際、
一言だけ残す。
「生き延びろ、
管理者」
信長の気配が、
薄れる。
管理室に、
再び静けさが戻る。
だが。
孤独ではない。
俺は、
管理席のモニターを見る。
補助観測ラインが、
確かに
点灯している。
「……次は、
倒れない」
それは、
誓いではない。
運用方針だ。
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