第27話反動
管理室に戻った瞬間、
膝が、
わずかに笑った。
「……っ」
倒れはしない。
だが、
立っているのが
少しだけ億劫になる。
椅子に座る。
背もたれに
体を預けた途端、
視界の端が
一瞬、白く飛んだ。
「……やっぱり、
直接は重いか」
管理室は、
変わらず静かだ。
警告音も、
エラー表示もない。
正常運転。
それが、
一番厄介だった。
《因果干渉:完了》
《影響範囲:局所》
《世界線補正:自動実行》
淡々と並ぶログ。
成功。
問題なし。
――そう、
“結果”だけを見れば。
「……代償は、
俺か」
こめかみを押さえる。
痛みではない。
重さだ。
思考が、
水の中みたいに
鈍る。
十柱の気配を感じる。
誰も、
口を出さない。
それが、
余計に響いた。
「……言いたいことがあるなら、
言えよ」
独り言。
返事はない。
だが――
天照大神だけが、
静かに視線を向けてくる。
責めていない。
肯定もしていない。
ただ、
見ている。
「……分かってる」
「やりすぎた」
直接干渉。
因果遮断。
象徴化の否定。
本来なら、
世界に任せるべき流れだった。
それを、
“管理者の判断”で
止めた。
「……でも」
息を整える。
「放っておけなかった」
頭の中に、
あの家の空気が
蘇る。
誰かの期待が、
一人に押し付けられる感覚。
あれを――
“自然”とは呼べない。
「……俺は、
神じゃない」
「裁く気も、
救う気もない」
「ただ――
壊れる前に、
線を引いただけだ」
言い訳だと、
自分でも思う。
だが、
後悔はしていない。
モニターの端で、
新しい数値が
静かに点灯する。
《管理者負荷:上昇》
《回復見込み:未定》
「……未定、
か」
笑えない。
だが、
驚きもしなかった。
これが、
管理者の現実だ。
世界を守る代わりに、
自分が削れる。
誰にも知られず、
誰にも感謝されず。
それでいい。
「……次は、
もう少し
上手くやる」
椅子から立ち上がる。
足取りは、
少し重い。
だが、
止まらない。
管理室の灯りは、
変わらず点いている。
世界は、
今日も回っている。
それを支える者が、
どれだけ消耗しているか――
誰も知らないまま。
それでも。
管理者は、
席を空けない。
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