第18話双子は、一人分ではない
第三柱が起動してから、
管理室は妙に騒がしくなった。
『ねえねえ、
この国さ〜
今“キレやすい期”入ってない?』
「黙ってて」
俺が即答すると、
第三柱はケラケラ笑った。
『はーい、
空気読むわ〜』
読めてるから余計に厄介だ。
「……次を起動します」
リーネが、
淡々と割って入る。
「第四柱、第五柱。
同時起動を提案します」
佐倉が、
ぎょっとした顔で振り向いた。
「同時って……
二人分ですか?」
「はい」
リーネは、
何のためらいもなく頷く。
「この二柱は、
単独では不完全です」
中央ホログラムに、
二つの枠が並んで表示される。
『管理神:第四柱』
『管理神:第五柱』
『担当領域:生命分岐・選択』
「……嫌な言葉ですね」
佐倉が、
小さく呟いた。
「生きるか、
死ぬか」
「選ぶか、
見送るか」
俺は、
静かに言葉を足す。
「そういう瞬間を、
扱う」
起動シークエンスが、
二重に走る。
光が絡み合い、
ほどけ、
再び結ばれる。
そして――
二人が現れた。
『……おはよう』
小さく、
控えめな声。
白い服を着た、
同じ顔の少女。
だが、
次の瞬間。
『ちょっと!
あたしが先でしょ!』
明るく、
強い声。
同じ顔。
同じ背丈。
だが、
雰囲気がまるで違う。
「……双子」
佐倉が、
息を呑む。
「第四柱」
リーネが、
淡々と告げる。
「第五柱」
二人は、
同時にこちらを見た。
『……よろしく』
『よろしくねっ!』
第三柱が、
すぐに反応する。
『え、
可愛くない?
世界観ズルくない?』
『ズルくない』
『ズルいって!』
二人は、
顔を見合わせた。
『……うるさい人』
『……騒がしい神』
ぴたりと、
意見が一致する。
第三柱が、
傷ついたふりをした。
『え〜
仲良くしよ?』
「……役割を説明する」
俺が遮る。
「君たちは、
“選択が世界を分ける瞬間”を
扱う」
双子の片方――
静かな方が、
一歩前に出た。
『私は、
起きうる未来を見る』
もう片方が、
すぐに続く。
『あたしは、
どれを残すか決める』
管理室の空気が、
一気に冷える。
「……決める?」
佐倉の声が、
震えた。
『安心して』
静かな方が言う。
『私一人じゃ、
何もできない』
『そうそう』
明るい方が、
肩をすくめる。
『二人揃わないと
何も確定しない』
ホログラムに、
一つの映像が映る。
救急搬送。
二人の重傷者。
助かるのは、
一人。
『この場合』
『この人が助かる未来は、
七通り』
『こっちは、
三通り』
数字が、
無慈悲に並ぶ。
「……だから、
双子なのか」
俺は、
歯を食いしばった。
「一人に判断させないため」
『そう』
『一人だと、
偏るから』
第一柱は、
黙って整理を続けている。
第二柱は、
静かにログを走らせる。
第三柱は、
珍しく黙っていた。
「……確認する」
俺は、
二人を見る。
「最終判断は、
誰がする?」
双子は、
同時に答えた。
『管理者』
『あなた』
逃げ道は、
なかった。
第四柱と第五柱は、
選択肢を示す神。
だが、
選ぶのは――
常に、人だ。
空席は、
あと五つ。
そして、
管理室はもう、
“静かな場所”では
なくなっていた。
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