第14話十の空席
管理室の中央に、
新たなホログラムが展開された。
世界地図ではない。
人のデータでもない。
構造図だった。
「……人を増やす前に、
やることがある」
俺がそう言うと、
佐倉が顔を上げる。
「神、ですか」
即答だった。
もう、
この場の空気を理解している。
「ああ」
俺は頷く。
「今の問題は、
判断が遅いことでも、
観測が足りないことでもない」
「管理を支える層が、
存在しない」
リーネが、
即座に補足する。
「創造神は、
自ら判断しません」
「判断を“流す”ための
中間管理層を持っていました」
ホログラムに、
十の空席が表示される。
玉座でも、
祭壇でもない。
管理室と同じ、
無機質な椅子。
「……神って、
もっとこう……
威厳あるものかと」
佐倉が、
戸惑い混じりに呟く。
「それは、
見せ方の話だ」
俺は答える。
「実際は、
仕事だ」
椅子の一つを指差す。
「ここに座るのは、
祈られる存在じゃない」
「世界を壊さないために、
淡々と処理を続ける役だ」
リーネが、
淡々と告げる。
「必要数、
最低十柱」
「それ以下では、
管理遅延は解消しません」
佐倉が、
息を呑む。
「……十人分の神を、
創る?」
「正確には」
俺は、
言葉を選んだ。
「管理に特化した神を、
設計する」
管理室の奥で、
新しいコンソールが起動する。
『神格設計モード:解放』
佐倉が、
画面を覗き込み、
思わず声を漏らす。
「……項目、多すぎません?」
「多い」
俺は即答する。
「だから、
創造神は複数だった」
リーネが、
一つずつ読み上げる。
「感情制御」
「倫理干渉制限」
「独立判断権限」
「人間への影響度」
「……全部、
制限付きですね」
「当然です」
リーネは、
迷いなく言った。
「管理神が暴走すれば、
創造神以上の災厄になります」
俺は、
深く息を吸った。
「……十柱」
軽い数字じゃない。
だが、
やらなければ始まらない。
「役割を分ける」
ホログラムに、
文字を打ち込む。
「事故管理」
「災害管理」
「因果補正」
「生命干渉制御」
「文明監視」
次々と、
十の枠が埋まっていく。
佐倉は、
黙ってそれを見ていたが、
やがて小さく言った。
「……人を守るために、
人じゃないものを増やすんですね」
「そうだ」
俺は、
はっきり答える。
「人を、
これ以上壊さないために」
リーネが、
最後に確認する。
「管理者」
「神格生成を開始しますか」
十の空席が、
静かに光る。
その光は、
希望にも、
呪いにも見えた。
俺は、
画面を見据え、
決断する。
「……開始」
次の瞬間、
管理室に
これまでにない負荷が走った。
世界は、
新しい“神々”を
受け入れ始めていた。
それが、
正しいかどうかは――
まだ、誰にも分からないまま。
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