私の大親友
大都市オールディントンは元々港町エイデンを始めとする近隣地域に様々な便利さをもたらした工業都市だった。港町エイデンや近隣地域の少年たちは特に【夢がある】場合を除いて大抵が大都市オールディントンに出て働くことになる。だから週末はオールディントンからの帰省者で溢れており、父を探すのは大変だった。
先日、父は大都市オールディントン工業都市で港町エイデンの象徴である海をエネルギー源に変えたウォーターラインの開発からエネルギー源であるウォーターラインを汲み上げて循環する心臓部である導体の製造に抜擢された。
工業都市の中には女学校が実施している見学を除いて立ち入る事はできなかった。だからオールディントンの話は母と父から聞くしかなかったのである。
だが、悲しいことに聞いたところで今の私に理解するだけの想像力がまるでなかった。だけど優しく話してくれる父の声が心地良くて、難しいはずなのに覚えている。
「やあ、アディントン」
並木道を歩く私を見つけた快活な声が、私のミドルネームを弾むように呼んでくれた。
私の耳にすっかり馴染んだ声に安心し、立ち止まって振り向いた。
「コンラッド」
私が少し見上げるほど背が高く、無造作な黒髪を少しだけ跳ねさせてニッコリと笑ってみせる少年がいた。
彼は私の幼馴染でずっと一緒にいてくれた大親友コンラッドである。コンラッドは自分の頭を掻きながら私の声に対して軽やかに頷いた。
「きみのお父さんのこと、親父から聞いたよ。エネルギー導体の製造に行くことが決まったんだって? すごいな。親父がずっとその話ばかりしてくるから耳がおかしくなりそうだったよ」
「コンラッドのお父さんだって開発部署で踏ん張ってるってお父さんから毎週聞いてるよ。夜は飲みに行ったりしてるってさ。おばさまはコンラッドと一緒にいるんだよね」
私の質問にコンラッドはいつものにこやかな調子で弾むように答えた。
「オールディントンまでは母さんが行くのはちょっと遠いかなあ。母さんは駅前のマーケットの接客で忙しいから。僕も学校に慣れたら日銭を稼ぎに行こうかなって考えてる。オールディントン工業都市の就職なら僕の進路に合うし、女学校側もオールディントン工業都市の就職がメインでしょ」
「そうだね。私もオールディントン工業都市の就職を目指そうと思って頑張ってるよ。でもエネルギー理論や電子工学からしてわからなくて頭熱くなりそうー……コンラッドー!」
「はいはい、僕が教える役ってことだね。仕方ないなあ、いいよ。でも来年からきみもバイトしてよ。週末特に人で溢れかえって大変だから」
「やったー! コンラッド、頼りにしてるからね!」
「ほんと、調子いいんだから」
コンラッドは呆れながらも柔らかく笑って私と並んで歩いていく。
緑に溶けるように建てられた樹木色の四角形の箱庭と透き通る硝子窓を視界に入れながら、黄昏の空に包まれながら帰路を歩く。
何も変わらない、変わることのない、心が弾むように続くあり触れた日常だった。
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ムーンライト・シーサイド 真北理奈 @rinakakuyomu
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