第6話 新聞部の女子は地味という幻想が、完全に死亡した件

昼休み。

スティーブン先生は、職員室で完全に浮いていた。


誰とも喋らない。

誰とも目を合わせない。


それなのに、視線だけはやたら集まる。


スティーブン(俺、今日も嫌われてんな)


机の上には、

誰が入れたのか分からない“差し入れ”。

《カロリーメイト(チョコ味)》


スティーブン「……」

裏を見る。

《新聞部より》


スティーブン「……は?」


その頃、新聞部。

部室という名の物置。

埃。

段ボール。

謎のインクの染み。


そこにいるのは――

メガネ・地味・無表情。

新聞部部長、真壁(まかべ)。


真壁「……スティーブン先生」


部員A「やっぱヤバいよね」


部員B「初日から警察ワード飛び交ってたし」


真壁は、ノートパソコンを開く。

画面には

《スティーブン先生・行動ログ》。


真壁「暴力的発言、銃に関する発言、生徒への過剰な心理圧迫」


部員A「完全アウトじゃん」


真壁「でも」

真壁は、少しだけ口角を上げた。

真壁「“本物”の匂いがする」


部員B「え?」


真壁「この人、演じてない」


放課後。

スティーブン先生は、

なぜか新聞部に呼び出されていた。


スティーブン「……で?」


真壁「取材です」


スティーブン「拒否権は?」


真壁「ありません」


スティーブン「あるだろ普通」


真壁「教師には、ありません」


スティーブン「この学校、法律どうなってんの?」


真壁は、淡々と質問を始める。

真壁「質問1。生徒を殴った理由は?」


スティーブン「……躾」


真壁「質問2。銃はどこで入手しました?」


スティーブン「拾った」


真壁「質問3。人を殺したことは?」


スティーブン「――ある」


部室の空気が、凍る。


部員A「え?」


部員B「え??」


真壁「……」

真壁だけは、瞬きもしない。


真壁「事実ですか?」


スティーブン「夢の中でな」


部員A「びっくりさせんなよ!!」


部員B「心臓止まるかと思ったわ!!」


真壁「……夢、ですか」

真壁は、カタカタとキーボードを叩く。


《発言は比喩的表現の可能性あり》

真壁「では、最後の質問です」


スティーブン「まだあるのかよ」


真壁「先生は――この学校で、何をしたいんですか?」


スティーブン「……」

少しだけ、沈黙。


スティーブン「退学者を出さない」


真壁「本気ですか?」


スティーブン「本気だ」


真壁「理由は?」


スティーブン「……」

スティーブン「クビになりたくねえから」


部員A「最低!!」


部員B「でも正直!!」


真壁「……」

真壁は、初めて微笑んだ。

真壁「いいですね」


スティーブン「どこがだよ」


その夜。


警視庁・地下。

例の4畳半――

警視庁匿名係。


左京「新聞部が動き始めました」


カブヌキ「はっや!!先生まだ6話目っすよ!?」


左京「物語の都合ですね」


カブヌキ「メタ!!」


左京「白井さん」


白井「……」

白井は、新聞部の記事を眺めていた。


《危険教師か、最後の希望か》


白井「……いいタイトルだ」


左京「予定より、少し早いですね」


白井「構わない」

白井は、静かに言う。

白井「彼はもう、“見られる側”に入った」


カブヌキ「それって……」


白井「逃げ場がなくなった、ってこと」


翌日。


校内掲示板に、貼られた一枚の記事。

《特集:スティーブン先生》

生徒たちが、ざわつく。


「やばくね?」

「普通に警察案件」

「でも、なんか本気じゃね?」


教室の後ろ。

スティーブン先生は、それを見ていた。


スティーブン「……」

そして、苦笑する。


スティーブン「参ったな」


その背後。

白井が、静かに立っていた。

白井「先生」


スティーブン「……なんだ」


白井「次は、もっと派手に行きましょう」


スティーブン「……」

スティーブン(あ、これ)

スティーブン(完全に詰んでるやつだ)

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