第4話 新聞部=地味、という幻想が粉砕される音
午後の授業。
教室は、いつも通り荒れていた。
いや、正確には荒れそうで荒れきれていない。
理由は一つ。
スティーブン先生が、
黒板の前で腕を組み、何もしていないからだ。
教頭(怖え……あいつが静かな時が一番怖え……)
スティーブン「……なあ」
教頭「なに?」
スティーブン「このクラス、新聞部いるよな?」
教頭「いるけど……急にどうした?」
スティーブンは、黒板を指差した。
そこには、いつの間にか貼られていた一枚の紙。
《暴力教師、ヤンキー高校に爆誕》
――という、完全にアウトな見出し。
教頭「……あ」
スティーブン「これ、誰が作った?」
教頭(あ、詰んだ)
「はい」
教室の後ろから、
静かに手が上がった。
誰も注目していなかった席。
そこにいたのは――
金髪。
ギャル。
机の上には新聞原稿。
教頭「……え?」
スティーブン「……え?」
不良A「このクラスに女子いたっけ?」
不良B「都市伝説じゃなかったの?」
女子「失礼な。実在してます」
彼女は立ち上がった。
桜愛(さくら)「新聞部・取材担当、桜愛です」
教室がざわつく。
教頭(新聞部=地味、という俺の固定観念が今、死んだ)
スティーブン「……お前が、これ書いたのか?」
桜愛「はい。事実ベースで」
スティーブン「どこがだ」
桜愛「生徒を殴りました」
スティーブン「……」
桜愛「銃を見せました」
スティーブン「……」
桜愛「給食、怪しかったです」
教頭「そこも拾うな!!」
桜愛「なので“捏造”ではありません」
教室、静寂。
スティーブンは、ゆっくりと歩き出した。
教頭「やめろ……今近づくと完全にセクハラ案件……」
スティーブン「なあ、新聞部」
桜愛「はい?」
スティーブン「覚悟はあるか?」
桜愛「何のですか?」
スティーブン「真実を暴く覚悟だ」
教頭(あ、カッコつけ始めた)
桜愛は、ふっと笑った。
桜愛「先生。真実を暴くのが新聞部です」
スティーブン「……ほう」
桜愛「それに」
彼女はスマホを取り出し、
画面を見せた。
そこには――
《昨日・某ファミレスにて》
スティーブンがハイボールを連続注文している写真。
教頭「うわぁ……」
桜愛「無銭飲食未遂。逃走。証拠あり」
スティーブン「……」
教頭(完全に詰んだ)
スティーブンは、数秒沈黙したあと、
なぜか胸を張った。
スティーブン「よし」
教頭「よし、じゃねえよ」
スティーブン「このクラスで授業を受けたければ」
教頭「待て」
スティーブン「俺を記事にしろ」
教頭「待てって」
桜愛「……は?」
スティーブン「中途半端に暴くな」
教頭「完全に自爆覚悟の発言やめろ!!」
スティーブン「どうせなら、“全部”書け」
桜愛は、一瞬だけ黙った。
そして、にやっと笑った。
桜愛「……面白いですね、先生」
教頭(あ、噛み合った)
その様子を、
教室の隅で白井が静かに見ていた。
白井(自分から檻に入るタイプか……)
白井は、小さくメモを取る。
《第一ゲーム:順調》
チャイムが鳴る。
教頭「……なあ」
スティーブン「ん?」
教頭「これ、どう考えても後で地獄見るやつだよな?」
スティーブン「地獄?もう住民票ある」
教頭「誇るな」
こうして、
ヤンキー高校に
・暴力教師
・新聞部ギャル
・静かに笑う優等生
という、
ろくでもない歯車が噛み合い始めた。
誰もまだ知らない。
この日が、
「戻れなくなった日」だということを。
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