第3話 田中、完全復活(なお学習はしていない)

――昼休み。

教室の空気は、どこか張りつめていた。


理由は一つ。

田中が、復活していた。


昨日まで床と友達だった男が、

今日は包帯を巻き、

なぜかリーゼントをいつもより盛って帰ってきていた。


田中「……おい」


スティーブン先生は弁当を食っていた。


田中「昨日のアレ、まだ終わってねえからな」


スティーブン「唐揚げ一個やるから許せ」


教頭「話し合いが雑すぎるだろ!!」


田中は、机をドンと叩く。

田中「俺はなぁ!この学校で“最強”なんだよ!!」


不良A「田中さんマジで言ってます!」


不良B「昨日のは不意打ちだっただけっす!」


スティーブンは箸を置いた。

「なるほど」

教頭(嫌な間だ……)


スティーブン「じゃあ、確認しよう」


田中「何をだよ」


スティーブン「お前が“最強”かどうかだ」


教頭「やめろ!!確認方法が絶対ろくでもねえ!!」


スティーブンは黒板に大きく書いた。


《田中・最強確認テスト》


田中「なんだそりゃ」

スティーブン「3問正解したら、お前をこのクラスの“王”と認めてやる」


不良たちがざわつく。

田中「負けたら?」


スティーブン「お前が俺の授業を真面目に受ける」


田中「……チッ。楽勝だ」


教頭「なんで賭けが成立してんだよ!!」


第1問

スティーブン「質問だ」


黒板にチョークで書かれる。


Q1:人を殴ったらどうなる?


田中「簡単だろ!」


田中「スッキリする!!」


ブーッ!!

スティーブン「不正解」


教頭「正解あるのかよこれ!!」


第2問


Q2:教師に逆らったらどうなる?


田中「昨日みたいにぶん殴られる」


ピンポーン!


田中「よっしゃ!」


スティーブン「正解だ」


教頭「教育的に最悪の正解出すな!!」


第3問


スティーブンは、少し間を置いた。

「最後の質問だ」


黒板に書かれた文字を見て、

田中の顔が歪む。


Q3:本当に強い奴ってのは、どんな奴だ?


教室が静まり返る。

田中は黙った。


数秒――

いや、人生で初めて考えている顔をしている。


田中「……」

不良たちも息を飲む。


教頭(田中が考えてる……だと……?)


田中「……拳が強いやつだろ」


ブーッ!!

スティーブン「残念」


田中「じゃあ何なんだよ!!」

スティーブンは淡々と答えた。

「負けを認められるやつだ」


教室が、しん……とする。


田中「……は?」


スティーブン「昨日、お前は負けた」


田中「……」


スティーブン「でも今日、お前は戻ってきた」


田中「……」


スティーブン「それだけで、お前は“雑魚”じゃない」


教頭(あれ……ちょっとだけ……いいこと言ってない……?)


田中は、歯を食いしばった。


そして――

田中「……クソが」


椅子を蹴り、

教室を出て行った。


不良たちも慌てて追いかける。


静かになった教室。

その隅で、

ずっと黙って外を見ていた白井が、

小さく笑った。

白井「……ふーん」


教頭「……なあ」


スティーブン「ん?」


教頭「今の、偶然いい話になっただけだよな?」


スティーブン「偶然だ」


教頭「だよな!!」


白井は、心の中で呟いた。

(この教師……壊す価値、あるな)


教室の外では、

チャイムが鳴っていた。

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