第2話 トランプタワー作るやつの謎の強キャラ感
――沈黙の教室。
昨日、銃声(※たぶんゴム弾)が鳴り響いたとは思えないほど、
今日は逆に静かすぎた。
理由は簡単だ。
教室の真ん中で――
田中が倒れていた。
顔面にうっすら青あざ。
椅子はひっくり返り。
魂はどこかに置いてきた顔。
その横で、教壇に立つスティーブン先生は――
ドヤ顔だった。
「質問はあるか?」
誰も答えない。
空気が重い。
重すぎる。
その沈黙を、一枚のトランプが切り裂いた。
――カサッ。
音のした方を見ると、
教室の一番奥。
席に座ったまま、
黙々とトランプタワーを積み上げている男がいた。
切間(きりま)。
このクラスの“ブレイン”。
殴らず、騒がず、
ただ頭が異常に回るタイプの危険人物。
切間は、顔も上げずに言った。
「なあ、スティーブン先生」
全員の視線が集まる。
「ゲームしようぜ」
教頭が、廊下で即座にツッコんだ。
「やめろぉぉぉぉ!!」
スティーブン先生は興味深そうに笑った。
「ほう?どんなゲームだ?」
切間はようやく顔を上げる。
「54枚のトランプを使う」
「スマブラ?」
「違う」
「マリカ?」
「違う」
「UNO?」
「死ね」
教頭「教育委員会呼ぶぞ」
切間は淡々と続けた。
「お互い一枚引く。数字が大きい方の勝ち。
Aは1、Kは13だ」
「負けた方は?」
スティーブンが聞く。
切間は、にやっと笑った。
「お前が負けたら――この学校を全裸で去れ」
教室がざわつく。
「俺が負けたら?」
「お前の授業を、ちゃんと聞いてやる」
一瞬の沈黙。
次の瞬間――
スティーブンが高らかに宣言した。
「いいだろう」
教頭「よくねえよ!!!!!」
スティーブンは切間を指さす。
「俺が負けたら退職金がっぽりもらって辞めてやる」
教頭「初日で退職金ねえから!!」
「お前が負けたら?」
切間「廊下を全裸でフルチンダッシュ」
教頭「どっちも地獄じゃねえか!!」
トランプが、机の上に置かれる。
切間の手元には、
なぜか崩れないトランプタワー。
スティーブンは一瞬、それを見た。
(……こいつ、何か持ってるな)
二人が同時にカードを引く。
スティーブン――「7」
切間――「8」
一瞬で勝負が決まった。
教室が、静まり返る。
切間は立ち上がらず、ただ一言。
「先生。約束だ」
教頭「待て待て待て待て!!」
その瞬間。
ガシャァァァン!!!
切間のトランプタワーが、突然崩れ落ちた。
全員が固まる。
切間の表情が、初めて歪んだ。
スティーブンは笑った。
「残念だな」
「……何?」
「そのタワーが崩れた時点で――お前の“集中”は切れてる」
切間「は?」
スティーブンはカードをひっくり返した。
「実はな――俺、最初から2枚引いてた」
教頭「反則だろ!!」
スティーブン「教育的配慮だ」
カードは――
「K」
教室がどよめく。
切間は、ゆっくり笑った。
「……面白いじゃん、先生」
その目は、完全に敵を認めた目だった。
教頭は悟った。
(あ、これ……この学校……さらにやべえ方向に行ったわ)
こうして――
ヤンキー高校に、
・銃を撃つ教師
・トランプで生徒を煽る教師
・なぜか生徒が辞めない教師
という、
最悪で最高の異物が定着し始めたのだった。
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