GTS

イミハ

第1話 ヤンキー高校に“毒”がやってきた日

この高校には、暗黙のルールがある。

教師は長生きしない。

生徒は反省しない。


そして、校門をくぐった瞬間から人生が詰み始める。


通称――

県立・極東ヤンキー高等学校。


校内には、殴る・壊す・サボる・威圧するを主食に生きている不良がうようよいて、

教師は最短で「初日昼休み」、最長でも「三日」で心を病んで消える。


ちなみに、前任の担任は――

朝のホームルームで黒板に名前を書こうとして、

後ろから飛んできた椅子に当たってそのまま帰った。


二度と戻ってこなかった。


そんな学校に、今年も犠牲者が補充された。

朝の職員室。


教頭は胃薬を三錠飲み干しながら、校長に言った。


「本当に…今年も、来るんですね…担任…」

校長は遠くを見る目でうなずいた。


「来ます。来てしまいました」

「逃げなかったんですか?」

「履歴書が…完璧すぎて…」


その瞬間――

職員室のドアが勢いよく開いた。

「ハロー!グッモーニンジャパン!!」

全員が硬直した。


金髪。

サングラス。

やたらムキムキ。

なのに、なぜか白衣。


そして第一声。

「俺の名前はスティーブン!今日からお前らの“教育”を担当する!!」

教頭は反射的に思った。


(あ、終わった)

一時間目・問題のクラス。


教室に入った瞬間、スティーブンは察した。


・机に足を乗せてるやつ

・トランプタワーを作ってるやつ

・スマホで出会い系を漁ってる女子

・窓際でニヤニヤ外を見てる謎の男

・そもそも半分いない


地獄だった。

スティーブンは、教壇に立つなり叫んだ。

「よし!!全員座れ!!」


――シーン。

誰一人、動かない。


三秒後、後ろの席から声が飛んだ。

「は?誰だよこいつ」

「新しいサンドバッグじゃね?」

「何日もつか賭ける?」


その瞬間。

バァン!!

乾いた音が教室に響いた。


黒板に、銃弾の跡が残った。

「静かにしろ」


全員が凍った。

スティーブンは、笑顔で言った。

「安心しろ。ゴム弾だ。たぶん」


教頭は廊下で頭を抱えた。

「呼ぶか…警察…いや…もう慣れてるか…?」

その日から、異変が起きた。


不良が殴られる。

机が飛ぶ。

なぜか給食が賞味期限切れ。


なのに――

誰も退学しない。

誰も不登校にならない。


むしろ、

「今日の授業、ちょっと面白かったな」

「ムカつくけど…なんか、目離せねえ」

そんな声が、教室に残り始めていた。


教頭は気づいていなかった。


この男が――

この学校にとっての救世主なのか、

それとも――

**とんでもない“災厄”**なのかを。


そしてまだ、誰も知らない。


この教師が、

未来で“マジックミラー号事件犯人”と呼ばれることを。

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