第16話 特別じゃなくたって

結局のところ、

僕がやっていることは

特別なことじゃない。


朝、光を浴びて。

ベランダの椅子に座って。

今日は行けそうだな、と思ったら

少し体を動かして。


疲れたら、やめて。

眠くなったら、眠って。

何もできない日は、

それを責めずに、

ただ一日をやり過ごす。


そんな日々の繰り返し。


劇的な変化もないし、

奇跡みたいな回復もない。


でも、

確実に言えることがある。


あの頃より、

少しだけ息がしやすくなった。


ほんの少し。

本当に、ほんの少し。


だけどそれは、

ちゃんとした前進で、

ちゃんとした回復だ。



昔の僕は、

「何かを成し遂げないと

 生きてる意味がない」

って思っていた。


でも今は、

ベランダで風に当たっているだけで、


「あ、今日は悪くないな」


そう思える瞬間がある。


それだけで、

今日は十分だと思える。



うつ病は、

人生を止める病気じゃなくて、


人生の歩幅を

 ゆっくりにする病気

なのかもしれない。


走らなくてもいい。

立ち止まってもいい。

座り込んでもいい。


ちゃんと呼吸していれば、

それだけで、

ちゃんと生きている。



僕は今日も、

光を浴びて、

ぼーっとして、

できたら少し動いて、

できなかったら、

それを許している。


それだけ。


それでいい。



もし、この文章を読んでいるあなたが

今、苦しかったら。


何もできなかった日が

続いていたら。


どうか、

自分を責めないでほしい。


あなたは、

ちゃんと生きている。


ただ、

回復している途中なだけ。



ゆっくりでいい。


人生は、

思っているより

ずっと長い。


そして、

思っているより

ずっと優しい。

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