第11話 断罪者の終着点(後編)
――静寂。
刃と刃がぶつかり合った直後、
森は一瞬、音を失った。
火花が宙で散り、
二人の足元に、深い亀裂が走る。
「……はぁ……」
カイの呼吸は荒い。
腕が、痺れていた。
(重い……一撃一撃が、命を刈り取る重さだ)
対するガルム・レイドは、
口元に笑みを浮かべたまま、大剣を構えている。
「いい……実にいい」
ガルムは、心底楽しそうに言った。
「ここまで生き残った賞金首は、久しぶりだ」
「……俺は、賞金首になるつもりはなかった」
「誰だって、最初はそう言う」
ガルムは肩をすくめる。
「だがな――
力を持った瞬間、人は《選ばれる》」
大剣が、再び振り下ろされる。
――轟ッ!!
カイは横に跳び、辛うじて避ける。
だが、地面が抉れ、衝撃波が身体を叩いた。
「ぐっ……!」
そのまま転がり、膝をつく。
「終わりか?」
ガルムが、静かに歩み寄る。
「悪くない最期だ」
――その瞬間。
「……まだだ」
カイは、立ち上がった。
震える足。
軋む骨。
それでも――立つ。
「俺は……」
拳を握る。
「仲間を、背負ってる」
その言葉が、森に響いた。
遠くで、
ルゥが身を強張らせ、
セラフィナが祈るように拳を握り、
ヴァルグリムが、黙って見守っている。
ガルムの笑みが、わずかに消えた。
「……なるほど」
低く、呟く。
「それが、お前の《核》か」
ガルムは、剣を構え直した。
「いいだろう。
なら――」
大剣に、赤黒い闘気が纏わりつく。
「俺も、本気で行く」
――《断罪解放》。
空気が、震えた。
「……それは……」
セラフィナが、息を呑む。
「あれは……ガルムの切り札……」
ガルムが、踏み込む。
「――《断罪斬》!!」
空間を裂く斬撃。
避ける、という概念が通用しない。
「――っ!!」
カイの脳裏に、警告が炸裂する。
――《致死予測》
――《回避不可》
(……なら)
カイは、目を閉じなかった。
「――受け止める」
――《支配権限・第一段階》
――《仲間連結:限定》
その瞬間。
ルゥの核が、共鳴した。
グラドの意志が、重なった。
セラフィナの覚悟が、流れ込んだ。
ヴァルグリムの誓約が、背を押した。
――“仲間の存在”が、力になる。
「――《権限補正・共有防御》」
光が、カイを包む。
――轟音。
斬撃が、真正面から衝突した。
森が、爆ぜた。
土煙の中、
立っていたのは――
「……受け、止めた……?」
ガルムの目が、見開かれる。
カイは、膝をついていたが、倒れてはいない。
「……仲間が、いるからな」
血が、口元を伝う。
「俺は……一人じゃない」
沈黙。
そして――
ガルムは、笑った。
「……そうか」
大剣を、地に突き立てる。
「負けたな」
「……え?」
カイが、目を見開く。
「さっきの一撃で、分かった」
ガルムは、空を見上げた。
「俺は……
“強い個”に惹かれて戦ってきた」
視線を、カイに戻す。
「だが、お前は違う」
一歩、後ろへ下がる。
「お前は、群れを背負う強さだ」
大剣から、力が抜ける。
「……これ以上やれば、どちらかが死ぬ」
ガルムは、はっきり言った。
「それは……俺の望む決着じゃない」
カイは、拳を握りしめた。
「……じゃあ、どうする」
ガルムは、笑った。
「生きろ」
そして、背を向ける。
「次に会う時は――
賞金首でも、敵でもない」
振り返り、最後に言った。
「《対等な存在》として、もう一度戦おう」
その姿が、森の奥へ消えていく。
――決着。
殺し合いではない。
だが、確かに“勝敗”はついた。
⸻
「……終わった、のね」
セラフィナが、息を吐く。
ルゥが、カイに飛びつく。
「ぷるっ!! 《マスター》!!」
「……はは」
カイは、崩れるように座り込んだ。
「……ギリギリだった」
ヴァルグリムが、静かに歩み寄る。
「人の子」
低い声。
「今日で、貴様は――
《群れを率いる者》として認められた」
魔獣王が、頭を下げる。
「魔獣勢力は、完全に貴様の旗の下に集う」
カイは、夜空を見上げた。
(……まだ、道は長い)
神。
世界。
管理者。
敵は、山ほどいる。
それでも――
「……進もう」
仲間がいる。
だから。
遠くで、
赤い瞳が、満足そうに細められた。
「いい結末だ」
そして、静かに告げる。
「――だが、次は“神”が本気だ」
《世界最底辺》から始まる仲間無限召喚 ――外れ能力だと思っていたら、世界を従える《支配権限》でした―― 羽蟲蛇 響太郎 @Kyotaro_1123
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