第3話 手に汗握る戦い?
朝の日差しが顔に当たる。今日も気持ちのいい目覚めだった。
今日は私よりもサシャの方が早く起きていた。
「おはよぅ…サシャ」
「…おはようございます」
…なんでかサシャにずっと見られている。流石にそんなに見られるとこちらも恥ずかしいのだが。
私はサシャに「なんでそんなに見てくるの」と聞いてみたが、答えをはぐらかされた。
私は顔を洗い、サシャと一緒に朝ごはんを食べに行った。
「あら、奇遇ね」
食堂に行くとリリーが話しかけてきた。
「あっ、リリー」
「名前で呼ばないでくれる⁉︎私達そんな仲じゃないでしょう⁉︎」
「ダメなの?」
「…ッ、貴方顔がいいからって調子に乗ってるでしょ…ってちがーう!!私達敵同士なのよこんなにほのぼのしてたらダメでしょう⁉︎」
「一緒に朝ごはんにしましょ」
「人の話ほんっと聞かないわね…まぁいいわ、今日は覚悟してなさい!」
そう言ってからリリーはその場を去っていった。
私達も食事を終えてから練習場へと向かった。
授業が始まって早々ナルコプシア先生は戦闘用カカシに魔法を打ち込んでいた。
「六級火属性魔法【
真ん中にあるカカシは胸元部分が焦げ付いていた。
そのカカシは瞬時に焦げ部分がなくなっていった。修復魔法がかかっているらしい。
「みなさんも実際にやってみましょう!わからない人は是非聞いてくださいね」
その後、各自で魔法を放っていたが、私はそれをずっと眺めていた。
「凄いなみんな」
精度も威力もかなり高い。所々見ると、五級も使える人がいるみたいだ。このクラスには優秀な人が多いみたい。
しかし、サシャを見てみると。
「うわーん!全然出来ないよー!」
全く魔法が出なくて泣いていた。
ナルコプシア先生も困り果てていた。私も六級の魔法が出せない人は初めて見た。
「光属性の魔法しか使えない?うーん、なんでかしら」
いくら苦手な属性だったとしても、最低六級までは使えるはずだ。それでも使えないというのは私でもわからない。
光属性が使えると言っても七級までだった。
六級はいくら詠唱しても全く使えてなかった。
「ルルネさんの魔法も見てみたいです…」
あっ、こいつ逃げやがった。そんな調子じゃいつまで経っても成長しないぞ。
「ちょーーーーっと待ちなさーい!」
「あっ、リリー」
「だから…はぁ、もういいわ」
リリーは練習場の奥の方にある模擬戦闘場を指差していた。
「昨日言ったわよね、決闘よ!」
「えぇ〜…ほんとにやるの?」
「やるったらやる!」
「じゃあルールをつけよう」
1.六級以上は使わないこと
2.六級以下ならどの属性も使っていいこと
3.勝利条件は相手を戦闘不能、降伏させること
「最低限これは守りましょう」
「いいわよ、早く来なさい!」
「では先生が審判をしますね、危険そうだと思ったら中止しますからね」
私達は戦闘場に立つ。
「準備はいいかしら」
「こっちはいいわよ」
先生はどこから持って来たのか、笛と旗を持っていた。
他の生徒達もなんだなんだと興味深そうに見学を始めた。
「では、二方の準備が整ったところで…よーい、スタート!」
最初はリリーの方が早かった。
「六級火属性魔法【
「珍しい、杖じゃなくて剣なんだ」
基本的に魔法は杖に魔力を込めてそれを発射する、いわば魔力は導線で杖が発射装置だ。
杖以外の武器だと、魔力を武器に繋げるのが難しいから剣だと魔法がブレるはずなのに、リリーはそれを使いこなしていた。
「凄い凄い」
「軽く避けながら言わないで!」
だって避けないと痛そうじゃん。
【
だから、人に近づかなければいけない。
「いっけぇ!」
リリーは火を纏わせながら剣を振り上げてきた。私はそれを察知し、急いでその場を離れた。
「今のは危なかった…」
近接戦なんてあまりした事なかったから、後少しのところで掠るところだった。
「ちょっと、貴方も何かしなさいよ」
「今からやるところ」
ちょうどいい、私が前世で作った使えなかった魔法を試してみよう。
「頑張って避けてね、六級複合魔法【
「なにこのふわふわしてる水はあばばばば」
この魔法は私が面白そうと思って作った魔法だ。
水属性魔法に雷属性魔法を入れて浮かせたもの。
魔力の量も少ないから複数作ることもできる。
…が、火力も出なくてほんの少し痺れるだけの微妙な魔法に出来上がっただけだった。
「くっ…触れたらダメなのね、じゃあ剣で!」
「へぇー、本人が触れない限り大丈夫なのか、これは勉強になる」
「舐めてるわね、はぁ!」
「おっと…なんで剣士科じゃなくて魔法科に来たの?」
「そんなっ、ことっ、今関係ないっ!」
感情的になった剣筋はどんどん悪くなっていく。なにが彼女をここまでさせるのか、私にはわからなかった。
「はぁ、はぁっ!どうよ、私の力は!」
私は力量が知れたのでこの戦いを終わらせることにした。
「六級複合魔法【
「いや、こんなの避けれない」
これも私が作った魔法だ。
五属性の魔法弾を数十個飛ばす、私が作った魔法の中でもかなり強い魔法だ。
リリーも最初の五、六個はなんとか弾いていたが、次第に隙が出来ていった。
「きゃあ!」
「そこまで!」
先生の一言で私は攻撃を止めた。私の魔法がリリーの剣を弾いたのだ。
「リリー・ミイレント・ヴェクトリア選手戦闘不能!ルルネ選手の勝利!」
見ていた生徒の人たちも「凄かったぞ!」と歓声が上がった。
「ルルネさん凄かったです!」
「あ、ありがと」
少々本気になり過ぎたようだ。そういえば周りに見られていたんだった。
褒められるのは初めてだったから少しくすぐったかった。
後ろを振り返るとリリーの姿はなかった。
「…」
○●○●○●○
月が光を包む時、私は練習場で月に黄昏ているリリーを見つけた。
「なによ、慰めに来たの?」
「いいえ?」
「じゃあ何しに来たのよ」
「別に何も」
リリーの目の下が赤くなっていた。隠れてないて泣いたのだろう。
「…ッ、同情なんて要らないわ…」
「そう…」
数分の沈黙が流れた。その沈黙を先に破ったのはリリーの方だった。
「さっき、なんで剣士科じゃなくて魔法科にいるのって聞いたわね」
「聞いたわね」
「私、ヴェクトリアなのに魔法があまり上手じゃないのよ、だから周りからヴェクトリアの恥って言われて来たの」
リリーの声歪んでいく。
「そんなの私でも分かってるわよ!でも、お父様もお母様もそんなこと気にしなくていいって」
恐らく両親の言葉もリリーの重みになっていたのだろう。
「だから私、剣を鍛えることにしたの、これが意外にも楽しくってね…でも、剣を振るうたびに恥って言葉が頭に浮かんできて、私このままでも大丈夫なのかなって」
リリーの声は更に歪んでいく。
「お父様とお母様まで馬鹿にされるのは嫌だったの、だから剣士科じゃなくて魔法科で勉強すれば何か得られるかなって…でも、貴方が現れた」
リリーは弱々しく体を丸めていた。
「強そうな貴方に勝ったら、否定的な意見がなくなると思って決闘を挑んだの…ごめんなさい…私の欲に貴方を巻き込んで、本当にごめんなさぃ…」
リリーは泣いていた。ポロポロと涙を流していた。
私はそれをギュッと抱きしめた。
「同情なんて…要らないって言った、のに」
「私は貴方のこと凄いって思ったわよ」
「強い人の言葉なんて信用出来ないわ」
「本当のことよ、私は重い剣を持ちながらあそこまで精度のいい魔法を使えないわ、それに貴方の魔法の良さを私は知っているわ」
「なによ…」
「まず、さっきも言ったけど魔法の精度が良いわ、魔力もちゃんと込められていて、剣に纏ってある魔力もちゃんと途切れずに最後まで纏わせられていたわね。これは血の滲むような努力をしないと到底辿り着けない事よ」
リリーも私の事を強く抱きしめてきた。
もう言葉も分からないほど泣きじゃくっていた。
「もう少しこうしても良いかしら…」
「大丈夫よ」
私は頭を撫でていた。
…私も普段ならこんなことしないのに、きっと昔の私と姿を重ねてしまったのね。
元最強魔法使い。力を隠して学園生活を謳歌する 紙ノ天気 @Sinnno_Tennki
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