第2話 ホストとケーキ②

若い女の子たちが目をきらきら輝かせ、目の前に並ぶケーキを楽しげに選んでいる。

ここはスイーツパラダイス――ケーキ食べ放題の天国だ。


……だが、その店の端に、異色のテーブルが存在した。


Vシネマ男優みたいな厳つい顔の豪屋さん。

キラキラ美貌を振りまく樹々兄。

そして、その二人の真ん中に――小学生くらいの女の子が、ちょこんと座っている。


「え? 隠し子!? 樹々兄……いつ産んだの?」

「動揺するのは分かるが落ち着け。隠し子にしては計算が合わない。そもそも姫塚は男だ」


見つからないように、反対側のテーブルからハイエナのように樹々兄を狙う私たち。


「狙ってねーよ!」


愛島さんのツッコミが飛ぶが、無視。

私は嫁の浮気現場を調査する探偵みたいに、こっそりスマホを構え――


「……いや待て」

「え?」

「撮るな。お前、ストーカー罪で訴えられるぞ」


愛島さんが私の手首を押さえて、スマホを下げさせる。

心がスン……と落ち着いた。


……法は強い。


「でも、あの子……」

「豪屋の妹だろ。たぶん」

「妹?」

「一人で来るにはハードル高い。あの面で小学生と二人で歩いてみろ」

「見事な誘拐犯かロリコン犯罪者の出来上がりですね」

「職質のオンパレードだろうな」


想像しただけで絵面が酷い。

豪屋さんの顔面、社会で損をするタイプの凶器だ。


「いっそ兄妹Tシャツとか、名札付けるとか?」

「ますます怪しいだろ」


うん、それはそう。


「まぁ……そもそもあの兄妹、半分しか血が繋がってないんだ」

「と、いうと?」

「異母兄妹。豪屋の父の再婚相手との子」

「なるほど……ゴーヤマンも大変だな」


そんな話をしながら、そっと視線を樹々兄たちのテーブルに戻す。


樹々兄が、女の子にケーキを小さく切って食べさせ、ティッシュで口元を拭いてやっている。

楽しそうに笑って、優しく頷いて――


微笑ましい。

……ちょっとそこ、変われ!(心の叫び)


まるで親子みたいに違和感がなくて、胸がきゅ、と縮んだ。

私は慌てて自分のテーブルへ視線を戻す。


「あれ?」


いつの間にか、色とりどりのケーキが目の前に並べられていた。

思わず愛島さんの顔を見上げる。


「伊達にホストとか言われてねーよ。ほら、俺たちも食おうぜ?」

「キザ……!」


……でも今は、その心遣いが何だか嬉しい。

私は愛島さんとケーキをシェアしながら、お腹いっぱいになるまで食べ尽くした。

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