第2話 ホストとケーキ①

「僕と交際して、不良少女にならないか?」

「………………」


下駄箱前でにっこり微笑み、どこか魔法少女の勧誘みたいな台詞を吐いたのは、愛島涼太あいじまりょうた

樹々兄と同じ三年生で、姫塚兄弟とも友人関係の男だ。


金髪をかきあげ、耳のピアスがきらりと光る。

柔らかな笑み、整った顔立ち。

女子に優しく言葉をかけるたび、校内の視線と好意を根こそぎ回収していく。


――が、全部計算だ。


自分の顔と声と仕草が“武器”だと知っていて、わざと演じている。

きっと将来、ナンバーワンホストになる。いや、すでに片足突っ込んでいる。


(多分、私の耐性試験も兼ねてる気がする)


「ときめきワードが一文字も無いので、お断りします」

「チッ、釣れねーなぁ……。まぁ、あの兄弟の傍で育ってきたら耐性つくわな」

「早速ホストの皮を外すのやめてもらえません? それと、耐性があるんじゃなくて――樹々兄以外はアウト・オブ・眼中なだけです」


私はチッチッチッと指を揺らしながら告げる。


「今日は兄弟と一緒じゃねーのか?」

「羅々は知りませんけど、樹々兄は憎きゴーヤマンとデートらしいです。

マジ許さん!」

「豪屋か……とうとう姫塚のアプローチに負けて受け入れたのか」


その言葉に、私の頬がぴくりと動いた。


「愛島さん」

「ん?」

「邪魔なゴーヤマンと、ボーイズラブ的展開でくっついてくれません?」

「悪ィが、そっちは専門外だわー。てかお前、目的のためなら手段選ばねーな? とんだ巻き込み事故だぞ」

「チッ。使えない男ですね」

「自分本位にも程がある!」


だって、樹々兄があんなに嬉しそうにしてるんだ。

嫉妬以外の何者でもない。


悶々としていたら、愛島さんがぽすん、と私の頭に手を置いた。

乱暴じゃない、軽い置き方。

意外とこういう距離感だけは上手い。


「で?」

「え?」

「どこだ。そのデートの場所」

「……」

「暇だから邪魔しに行くか?」


ニッと笑う愛島さん。

あらら。とても邪悪なお顔です。


その笑顔につられて、私もニッと笑い返した。


「主も悪よのう……」


そう呟きながら、予めリサーチしておいた樹々兄の行き先を告げた。

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