第1話 幼馴染は双子②
カシカシと慣れた手つきで羅々の頭を洗う私……。
悪魔は湯船の中でご機嫌に鼻歌を歌っている。
(毛根死滅する呪いでもかけてやろうか)
気づけばいつの間にか、この悪魔の背中や頭を洗う
――まるで侍女ポジションに昇格していた。
(解雇しろ! 今すぐに!)
心の中で叫ぶが、口には出せない。
だって……パワーバランスが違うのだ。
「なぁ……お前、いつまで樹々のこと想い続ける気だ?」
「一生、傍にいる所存ですが? 何か?」
「あいつが振り向かなかったらどうするんだ? 女としての旬も婚期も逃すぞ?」
「……」
私は無言で、シャワーを―― ザーッ。
羅々の顔面に直撃させた。
「ッぷあ……このクソアマ!」
「うわっ!」
大きな水しぶきを上げて、体が湯船にダイブする。
私はブチ切れた羅々に、そのまま湯船へ引きずり込まれた。
「……羅々は、何でそうなの……」
ずぶ濡れになりながら、ぽつり。
羅々は私の頭に手を置くと、ガシガシと掻き回す。
「悪いのはテメェだろ。言われて嫌なら言葉で反論しろ」
「語彙力が乏しいから無理……」
「ああ、お前はバカだったな……忘れてたわ」
そう呟いてニッと笑う羅々の鼻を、私はつまむ。
「双子なのに……なんで恋愛対象が違うの? 樹々兄だけ男なの?」
「そんなこと言われてもなぁ」
「羅々の恋愛対象が女なら、樹々兄もいつか変わるかもしれない」
「だから頑張るってか? ババァになるぞ、お前。樹々以外にも目線を向けろ」
はーっと深い溜息。 羅々は湯船から立ち上がる。
「風呂の中でゆっくり考えろ。上がったら着替え置いておく」
「ありがと……」
羅々が浴室から出ていく。
私は濡れた服を脱ぎ、湯船に浸かり直した。
「樹々兄以外に目線を向けろ……か」
出来るなら、とっくにやってる……。
羅々は口は悪いし歩く露出狂だけど、言ってることは正しい。
心配してくれているからこその言葉
――ただ、言い方がストレートすぎて心に刺さるだけで。
「胡桃ー。タオルと着替え置いといたわよー」
「うひゃ……ありがとー樹々兄」
突然の樹々兄コールに、変な声が出る。
タオルはともかく――下着まで用意されている複雑な乙女心よ……。
最近はもう麻痺してるけど、これはさすがにダメだろう。
(こんなんじゃ恋愛感情、湧くわけない……)
深いため息をひとつ吐き、身体を洗ってお風呂から上がる。
脱衣所には着替え一式と、薔薇の香りのボディクリーム。
「女子力……」
敗北感を抱えつつ、クリームを塗る。
薔薇の香りが広がり――気づけば樹々兄と同じ匂いになっていた。
◆
居間に戻ると、ケーキと紅茶がテーブルにセットされている。
美味しそうなケーキに、思わず目が釘付け。
「座って食べなさい。髪、乾かしてあげるから」
「はーい」
樹々兄の横に座り、イチゴたっぷりのケーキを手に取る。
テンションは一気にMAX。
「胡桃、イチゴショート好きでしょ?
美味しいって評判のお店のよ。味はどう?」
「最の高です!」
横には大好きな樹々兄。髪は乾かしてもらえて、手元には大好物。
……この幸福、過剰摂取じゃない?
「今日は私の命日かな……」
「縁起でもないこと言わないの」
樹々兄は苦笑しつつ、クスクス笑う。
「ねー……樹々兄、好きだよ」
「あら嬉しい。あたしも胡桃好きよ? フフフ」
いつも軽く流される私の告白。
笑ってくれてるのに、私だけ置いていかれるみたいで、胸がちくりとした。
BU-BU-BU-BU-
携帯が震える。
樹々兄が手に取り、通話ボタンを押した。
「ハーイ、どうしたの? 譲ちゃん。デートのお誘いかしら?」
嬉しそう――に、見えた。
そう“見えてしまった”だけで、私の胸は勝手に沈んでいく。
電話の相手は三年の
今、私の最大のライバル――ゴーヤ。
クッソー! いつかチャンプルにして食ってやんよ!!
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