【R15】さかなの骨

青切 吉十

追憶

 彼はセックスのとき、よく、私の口の中へ細くて長い人差指を入れてきた。

 私の舌をさわったり、歯をなぞったりした。

 セックスがはげしくなると、彼はその指を私の喉奥へ突っ込んだ。

 最初、苦しくて嫌だったけれど、それがだんだんと快感となり、ついには私のほうからせがむようになった。


 そんな彼と定食屋さんに夕食を食べに行ったときのこと。

 アジの開きを食べていた私は、喉に痛みをおぼえた。

「さかなの骨が刺さったみたい。ご飯食べなきゃ」

 私がそういうと彼は「たぶん、刺さっていないよ」と微笑した。

「そういうのって、骨で喉が傷ついて、刺さったような気がするだけらしいよ」

 彼の言葉に私が首をかしげて、「そうなの? じゃあ、本当に骨が喉に刺さったら、どんな感じなのかしらね」とたずねると、彼はまた笑って、「さあね」とだけ答えた。


 その後、彼に捨てられてしまった私は、自慰行為をするとき、左手の人差指を喉に入れながらでないといけないようになってしまった。

 そして、いったあとでいつも、彼とのたわいのない、さかなの骨の話を思い出すのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【R15】さかなの骨 青切 吉十 @aogiri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画