フライングバレンタインデー
藤泉都理
フライングバレンタインデー
あなたの手を貸してください一時間でいいですから。
自室でベッドに横たわり本を読んでいる休日であった。
幼馴染で陰陽師で常に巫女装束おかっぱ頭の女性、
ありがとう。
澄ました笑顔を向けた椛子は、懐に隠している短刀(陰陽師という特権で常時所持可能)を取り出したかと思えば、透の両手首を切り落としたのである。
正確には、透の両手首の生霊だけを斬り取っては、椛子の両手に憑依させたのである。
「じゃあ、一時間後に返します。お昼寝をしたらあっという間ですよ」
「………はあ」
自分の意思で動かなくなった透の手は、勝手に動く始末。
昼寝をさせてくれる気はあるのか。
すたこらさっさと居なくなった椛子は尻目に、透は透の両手に問いかけると、透の両手はベッドの横の小さな本棚の上に置かれたメモ帳にすらすらと文字を書き始めたたのである。
「………」
甚だしい熱を発生させた顔を覆いたくとも、両手はその通りにしてくれず。
透は扇ぎ始めた両手を見つめながら、まだ覚えていたのかよと呟いた。
【あなた以上のお菓子を作れないと判断しましたので、あなたの手を借りて作る事にしました。これで私のバレンタインチョコを受け取ってくれますよね】
(っつーか。絶対にこれ、本体? の意思を無視して書いてるだろ。いいのかよ? ああ。っつーか。何で一か月前の今日に俺の両手を借りに来たんだ? ああ、バレンタインデーで忙しくなる前にっつー配慮か。ん? じゃあもしかして、あいつ、まさか今日)
激しく踊り始める両手と連動したかのように慌てふためく透は、インターホンの音で一時停止をした。
「あらまあ。一時間って本当に早いのね」
(2026.1.14)
フライングバレンタインデー 藤泉都理 @fujitori
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます