第3話 侵入者
その男は、一週間前に筍を取ろうとして滑落した男だった。
「なんかあの親子怪しいな」
男は自分自身が一番怪しいくせに、親子の動きを見て、何やら予感めいたことを口走った。
やがて親子は竹やぶの中へと入っていった。
「ありゃ?そこは、俺がこの間、捕まった竹藪だ!一体、どこへ行くつもりなんだ!」
男は親子を見失わないように走った。
しかしどこにも親子の姿は見えなかった。
「ありゃぁ、絶対金持ちだな。あの山火事以来、ここいらには人がいなくなたが、確か一軒豪邸があったはずだ。誰も住まなくなっていたから、そこに住んでいるのかもしんねいな!」
なぜ、男はそう思ったのか?
実は、この男は2年前の山火事の後、この豪邸に盗みに入ったからである。
しかし、家の中は何もなく、人もいなかった。
男は暗くなってきた竹藪の中をなんとか歩いて抜けていった。
すると、家が見えてきた。
窓からは光が漏れている。
「やっぱりそうだ。あの豪邸に住んでいるんだ。へへ俺にも運が回ってきたな」
男は慎重に家の周りを歩いた。なぜなら防犯カメラで写されてしまうからである。
「カメラの位置は同じままだ。ようし、奴らがいない時間を調べてまたくるか」
男はそう言って夕暮れ迫る山林の中を消えていった。
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さて、先ほどの親子はどうしているだろうか?
「かぐや様、先ほど男が尾行してきました。いかがなされますか?我々の住まいが知られてしまいましたが」
母親と思われる女が、神楽耶に紅茶をいれながら聞いた。
「そうね。前回は気絶させただけにしましたが、番犬を飼いましょう。これから必要でしょうから。」
神楽耶は注がれた紅茶のカップを持ちながら言った。
「かしこまりました。大型犬がよろしいですね。ドーベルマン、土佐犬あたりがよろしいでしょうか?」
「番犬とはいえ、犬を飼うので、私は散歩もしたいわ。もう少し、小さめのにしましょう。ボーダーコリーがいいわ。とても賢いもの」
「ではさっそく、今夜にも用意いたします」
母親はどこか別の部屋へいってしまった。
全く不思議な親子?だった。
会話からして、まるで娘が主人で母親がサーバントのようであった。
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翌朝、調宮神楽耶は母親とまた歩いて学校へ向かった。
その姿を確認して、あの男が家に侵入しようとしていた。
「それにしても変なやつらだ。なんであの竹藪を通るんだ?まいいか。やはり家にはあの親子しかいないようだな。男はいない。よし、今のうちに入って、あの母親が帰ってくる前にずらかるか!」
男は防犯カメラの死角を熟知していた。
目ざし帽をかぶり全身黒づくめの姿にドライバー。
そう男はコソ泥のプロだったのである。
なぜ前回捕まらなかったのか?
実は男は足利市には住んでいない。
男は埼玉で盗みを働いていたのだ。
もし埼玉で捕まってたら恐らく逮捕されてしばらく出れなかっただろう。
しかし埼玉はそろそろ潮時だった。
だから渡良瀬川の中流の足利市に1週間前にやってきた。
1週間前は、足を滑らしただけという形で返されたのだったが、その時持っていた身分証明書は偽造された免許を持っていたため、無罪放免となり、なんとか釈放された。
「どうも運がなかったが、今日はいくぜ」
廻りに誰もいないことを確認すると、
「よし、いまだ!」
う~わんわんわん!
「おい!なんだ!犬がいたのかよ!」
犬は男に襲い掛かった。
豪邸ではあったが、山林に囲まれていて隣家もない所だったから、家の周りに塀はなかった。だから犬がいるとは思わなかったのである。
「くそ、はなせ、この野郎!」
男は服がちぎれながら、なんとか逃げた。
「チクショウ!だめだ、この家は!」
男はあきらめた。
番犬は、男が去ってゆくと、家の中へ戻った。
何事もなかったように、あたりは静まり返っった。
早春の山には若葉に溢れていた。
ウグイスの鳴き声も時々聞こえてくる。
街の通りでは、子供たちが通学の為に班を作って、神楽耶を待っていた。
続く
かぐや姫降臨 和 弥生 @kazu_yayoi1206
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