第2話 謎の親子現る
あれから一週間が過ぎた。
あの竹やぶで捕まった男は無罪放免で釈放された。
「もう、たけのこ採るんじゃないぞ!」
警察官に説教された男は気まずそうに頭をかいた。
「へい、わかっております。」
男が警察の留置所を出て、街で仕事を見つけようとぶらぶら歩いていると、母親と娘と思われる二人が歩いているのが見えた。
「なんだ?今頃。もう昼だぜ。そういえば腹減ったな」
2人の親子と思われる姿は、小学校の校門で一度立ち止まると、母親が娘に何か話しかけていた。
真っ赤なランドセルを背負った少女はうなずくと、二人は校門をくぐり、校舎の中へ消えていった。
「みなさん、お昼ご飯を食べる前に紹介したい人がいます。さ、どうぞ!」
クラスの担任の相澤先生が促すと、先ほどの親子が教室に入ってきた。
「では頑張るのよ!」母らしき女性は娘にそう告げると、教室から出て行った。
「では、かぐやさん、自己紹介お願いします」
少女は教壇にあがり、ぺこりとお辞儀をした。
「みなさん、初めまして。私は調宮神楽耶(つきのみや・かぐや)と言います。1周間前に、東京からここ、足利市に引っ越してきました。なにもわからないので、みなさん、よろしくお願いします」
教室の生徒たちは、東京から来たというだけでざわついていた。
「では調宮さん、今日から6年3組のみんなと仲良くしてくださいね」
「はい」
「黒繁さん、隣あいてるわよね。そこに調宮さん座らせてあげてね。よろしく」
少女は先生に促され、黒繁 香(くろしげかおり)の横に座った。
香かおりは軽く会釈しながら、その少女を見つめた。
黒くて長い髪が、とても艶やかで一瞬見とれてしまった。
「よ、よろしくね。私、黒繁香。かおりんでもいいよ。えっと、調宮神楽耶さん」
「こちらこそ。かぐやでいいですよ。東京でも、かぐやって言われていたから」
給食の時間になった。
みんなが食べ終わると、クラスの女子たちが調宮神楽耶の所に集まってきた。
「ねぇねぇ。東京のどこから来たの?」
「髪きれい~!なんのシャンプー使ってるの?」
「特異な科目は?私は体育!」
質問攻めになっているとき、男子たちはそれを横目で見ながら愚痴を言っていた。「なんだよ女子は!めずらしい生き物みたいに!パンダじゃないんだからよ!東京っていったって、田舎だろ。たいしたことないな、東京も」
あきらかに負け惜しみだった。
しかし、調宮神楽耶はあまりしゃべることもなく、物静かだった。
やがて物珍しさも終わったのか、彼女の周りに群がることもなくなった。
6時間目の授業が終わるころ、隣の席の黒繁香が聞いた。
「かぐやさん、帰りはどうするの?」
「おかあさんがまだ学校で待っているので、今日は一緒に帰ります。」
「そうなんだ。じゃ、また明日!」
チャイムが鳴り、掃除する生徒たち。
先生が調宮神楽耶を呼び止めた。
今日は掃除はいいわよ。
お母さんが待っているからお家へ帰ってくださいね。
生徒たちがまだ掃除をしているとき、一足早く、調宮親子は校門から出てきた。
街を通り抜けると、急に家も少なくなり山もまじかに迫ってくる。
2人はどんどん山奥の方へ歩いて行った。
その姿をみつめる一人の男がいた。
続く
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