かぐや姫降臨

和 弥生

第1話 竹やぶで生まれた子供

昔、昔、竹取の翁あり。






竹取物語の出だしである。






1000年前に地球に降臨したかぐや姫は、人間界を翻弄して月に帰ったとこの物語の主は伝える。






日本人にとって月は単なる星ではない。






そこには人間が住んでいて、人間より遥かに進んでいる月人がいると思われていたのである。






月にウサギがみえるのは、かつて因幡の白兎が天昇したからだと古いにしえの言い伝えがある。真相はともかくとして。






その因幡の白兎が、平安の世に現われたとしたら?






私たちは、かぐや姫が罪を犯して、その罪を贖うために人間界に降りたと言われていることを知っている。






ならば、






かぐや姫の犯した罪とは?






因幡の白兎の犯した罪とかぐや姫の罪は符号するのか?






謎は千年経っても謎だった。






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2024年春 場所は栃木






早春の山間にある街






ここは栃木と群馬の堺にある足利市






街の北側には山々が連なり、南には渡良瀬川が利根川へ注ぎこんでいる。






山を少し登れば関東平野を一望でき、かつて足利一族から日本を収める人物がでたことも偶然ではないだろう。






そして現在、過疎化の波がここにもやってきて、若者の流出が止まらない。






そんな過疎地の街で数年前、山火事が起こった。






乾燥した空気が燃料となり、なかなか止まらなかった。






全国的なニュースになったが、鎮火すると、一般の好奇心は薄れ、今ではほとんど覚えていない。地元民以外は。






山が燃えるということは木が燃えるということである。






人間も生き物も大変な被害を受けるが、植物は?と言うと、実は効能がある。






古代から焼き畑の農法があったように、燃えた灰は肥料となり、大地は新しく蘇り、木々は復活する。もちろん、時間はかかるが。






その中でもいち早く復活するのは竹である。






竹は地下茎を残したままなので簡単には死なない。






しかも日光を遮る樹木がなくなるので好都合なのだった。






そんな焼け跡に、筍が一斉に芽吹き、人々は我先に摂りに来た。






そして時が経ち、すっかり竹林として蘇っていた。






昼間でも暗いくらいである。






筍は山の持ち主が入山を厳しく制限したせいで、館単には入れなくなった。






「確かここいらに筍たけのこが沢山でるはず」






ある日、誰もいない暗闇の中で筍を取りに来た闇業者の姿があった。






彼は見つからないように照明をつけず、月明りだけで探していた。






しかし、あまりの暗さに足を滑らせてしまった。






思わずつかんだ竹が光っていた。






「なんだ?これは?光ってる?」






しかし、男は手を滑らせ、そのまま滑り落ちて気絶してしまった。






やがて竹林に静寂せいじゃくが訪れた。






しかし、竹は鈍い光で、その暗闇の中に立っていた。






すると、竹が割れた。






折れたのである。






自然に?






いや、そうではない。






自ら殻を破る雛鳥ひなどりのように、竹を打ち破ったのである。






中には小さな赤ん坊がいた。






鳴くこともなく、柔らかな肌を包み込むように光が赤子を守っていた。






そこへ、どこからともなく現れた人、その子を抱いた。






暖かそうな布地で赤子をくるむと闇へ消えていった。






朝が来た。






滑り落ちた男が目を覚ますと、あちこちに筍が生えていた。






「これはすげー!」






男は腰からナタを取り出し、筍を次々と掘り上げた。






しかし、地主に雇われた警備員が男を発見し、通報されてお縄になった。






現場には竹が折れた姿があり、警察がお前がやったのか?と聞かれたが、いや、知らない。おれはただ滑っただけだ。ここが筍を取ってはいけない場所だなんて、今初めて知った。と言った。






あの赤子を連れて行った人物は一体誰だったのだろう?






竹林に吹く風は、今日も音を立てて竹を揺らし、何も語らない。






続く

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