てとて【カクヨムコン11短編お題フェス:手】の力
雪うさこ
手
——手。
手とは人間が生きていく上で、とても重要な役割を果たす。
私が生まれたとき。母親の胎内から初めてこの広い世界に出たときに、最初に私を抱きとめてくれたのは、医師の手だった。
そして、看護師たちの手に処置されて、母親の手に抱かれた。
父親。祖父母。兄や姉たち——。みんなに抱かれて、確かに生まれたことを歓迎された。
一人で歩くようになっても、いつも母や父の手に支えられた。ふらつく足を心配して、両親たちは私の手を引いてくれたのだ。
食事をするとき。
入浴をするとき。
寝るとき。
いつも大人の手に支えられたものだ。
優しく優しく、私に触れる手に、安堵感と、幸福感に満たされる。
成長し、年ごろになると、心寄せる異性ができた。
互いに触れることは気恥ずかしく。最初は指先を触れ合わせた。
——大丈夫。
そう確認しあい、そして手と手をつなぐ。
互いの肌の熱を感じるのも手だ。
私は運命の相手を得て、そして彼との永遠を誓いあった。
手と手を取り合い、そしてどんな時も互いに支え合い、寄り添い合って生きていくことを誓って、指輪の交換をしたのだ。
私も母になった。自分がしてもらったように。たくさんたくさん、わが子に触れ、愛情を注ぐ。
私の手はだんだんと艶を失い、しわが目立つようになった。
毎日のように酷使される手は、いつしか変形し、痛みを伴う。
それでも手は休むことはない。
子の面倒をみて、家事をこなし、そして裁縫をしたり、読書をしたり、好きなこともたくさんした。その時に活躍したのは、私の手——。
夫を見送った。
手を合わせた。そして感謝の言葉をたくさん伝えた。
人生とは早い。
終末に差し掛かる。ベッドで静かに横たわっていると、どこからか長年連れ添った夫の声が聞こえてくるような気がした。
命の火が消えかかっている私のからだを、家族たちが優しくなでてくれた。
——ああ、暖かい。
あの静かな部屋で始まった私の人生は、こうして温かい手に見送られて終わるのだ。
人には『手』が必要だ。生まれてから終わるまで。手は私の人生を彩ってくれる宝物だったのだ。
—了—
てとて【カクヨムコン11短編お題フェス:手】の力 雪うさこ @yuki_usako
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