第5話 酒場にて

 この世界でのお金も手にする事が出来て一安心だ。

 ガルシア王国の王都からそんなに離れていないこの街に長期滞在するのは不安があるため早々に町を離れたいところだが、俺にはこの世界での知識が足りない。


 異世界での情報収集となれば酒場だなと日本で経験したRPGゲームの感覚で酒場に立ち寄る事にする。

 酒場は商業ギルドの真正面に建っていた冒険者ギルドに併設してあった。


 カウンターで商品を頼んで支払いをしてから席に着く日本で言えばハンバーガーショップの様なスタイルだ。

 あたりを見渡し飲んでる人が多かったジョッキに入ったビールを頼む。

 名前はエールという飲み物だ。

 俺の知識によるとビールは大別するとエールかラガーに分かれるんだったかな?


 他にもおすすめのつまみを尋ねると、ウインナーの盛り合わせやオーク肉を使ったステーキをすすめられたのでそれも頼む。

 料金を支払い、席についてエールを飲みながら待っていると十分ほどで料理も届いた。

 料理は冒険者がメイン顧客な商売だけあってとてもボリューミーだった。

 エールの味は日本で慣れ親しんでいたラガービールと比べるとフルーティーな感じがして俺は嫌いじゃないなと思った。


 しばらくすると店内が混んできて四人掛けのテーブルに一人で座っていた俺に声がかけられた。


「お兄さん、相席させてもらっていいかい?」


 声をかけてきたのは二十歳前後の三人組だった。


「ああ、構わないよ」と返事をすると女性二人が俺の正面に座り、残った男の子が俺の横に座った。


 三人ともエールのジョッキを手に持って「女神様に感謝を」と乾杯をして飲み始めた。

 気になったので聞いてみる。


「今の感謝をささげた女神様ってアストラーゼ様の事?」

「えっ? お兄さん変な事聞くな、他の女神様なんているのかい?」


「いや、俺、この国の出身じゃないから他の女神様とかいないのかな? と思ってさ」

「女神聖教の教えは世界中で共通だって教会の神官様から習ったよ? だからこの世界では言葉もお金も共通で使えるんだって」


 今、なんかとっても重要な情報が聞けた気がする……


「なるほどね、なあ君たち今日は俺がお酒を奢ってあげるから、色々話を聞かせてくれないかい?」


 そう持ち掛けてみると「つまみも食べ放題ならいいよ」と向かい側に座った女の子が言ってきた。

 提案を了承して色々な話を聞きながら三時間ほどを過ごした。


 この三人は幼馴染で、背が180センチ程でブラウンヘアの短髪の男の子がアッシュで19歳、金髪ロングで背が165センチ程の子がカレンで18歳、青みがかった髪の毛でショートボブにした背が150センチほどの子がサリーで17歳と言う事だ。

 三人でパーティーを組んで冒険者をしているそうだ。

 パーティーを組んで三年ほどでDランクの冒険者だということだ。


 冒険者は登録したてがFランクから始まりDランクからは中級レベル、Bランクになると上級レベル、Sランクまで上がると二つ名が贈られ望めば貴族になる事も出来るんだって。

 冒険者ギルドは一応国からは独立した機関で世界中どこへ行ってもランクは同等に扱ってもらえるが登録した国以外での活動はBランク以上からしか認められないという事だ。


 主に素材の納品額とクエストの受注成果によってランクが上がるそうだがCランク以上に上がるには、ギルドが指定した相手との模擬戦試験があるんだって。

 会話をしながらステータス鑑定をしてみた結果アッシュで平均的に百前後のステータスだったので俺の1万を超えるステータスというのはかなり高い方だな。


 他にもこの世界の人種の事なども聞けた。

 人族の他に獣人族、森人族、窟人族、魔人族、竜人族が存在し、それぞれに国家を構えていて、また他種族国家に商売や傭兵として移住している人も多いそうだ。

 まさにファンタジー世界だな。

 しかし……こんなに地球で出回っているテンプレ設定通りの異世界が存在するなんてどうなんだろう。

 もしかしてこの世界の事がモデルになってたりしてね?


 酒場を出てその日はこの街で宿を取った。

 翌朝は早くから起きだして商店街を見て回り必要最低限の食器や食料、飲料水、服などを購入してからガルシア王国の首都から出来るだけ離れる事にしたが、俺の商業ギルドのランクはまだDなので国境を超える事は難しい。


 隣国であるロマーノ聖教国とイストア帝国へ抜けるには、船で航路を渡るか魔物の森と呼ばれる幅50キロメートルにも及ぶ大森林を抜けるしかないようだ。

 俺の当面の目標はスキルポイントを後234ポイント貯めて転移スキルを23段階に上げる事だったのでガルシア王国の中でも辺境領と呼ばれる場所にあるダランという街を拠点にして過ごすことを決めた。

 ダランは辺境と呼ばれるだけあって魔物の森で狩れる魔獣を狩る事で生計を成り立たせる冒険者が多いそうだ。


 軽トラは途中で燃料切れ寸前になるまで乗った所で一度停車して、改造する事を考えたがそれより簡単な手段として車に残ってるガソリンを複製すればいいと気付いた。

 どうやってガソリンを取り出そうかと思ったが、上がりまくったステータスのごり押しで車を抱え上げて、給油口からガソリンを器に出し複製して酒の入っていた瓶に貯めていった。

 営業用の4リットル入りの焼酎の瓶を使ったのでとりあえず10本分ほど作って給油を終えた。


 当面はこれで移動には困らないな。

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