第2話 エクリチュールの舞台

 マリアと名乗るナニモノかについての情報は、ミミが神経ネットワークのリンクを利用して伝えてきた。


ただし、それは単なる記号的・言語的な情報に過ぎない。


ミミですら解読できない記号列が、大量に含まれていたからだ。



 ミミの推測では、量子コンピュータ用の制御プロトコルが使われているらしい。

それなので、そもそも解析は不可能だという。


 あくまでリンクはレベル3。

そのため、俺の脳神経系の情報は、REMSSにもあまりトラッキングできないことになっている。


 どこまで本当かは知らんが、な。


 ひとしきり説明を終えて


「ああ、はい。つまりアナタには、うーん、比喩的な表現ですが『贖う者』を追体験、あーいや?俯瞰してもらうためのスクリーンになってもらうわけです」


 ………贖う者ね、聖書のヨブ記においてヨブと神の仲介人となる神学的な誰某のことか。神と調停をしたい?神というのは?判然としない話ばかりしていてハッキリと理解できない。


「なに?世界を救えってこと?」


 俺の問いに


「あーいえ、うーんミミさんデータ送ったんで要約して伝えてください、そういう処理は苦手なんで」


 マリアが言うと


「……ええ、ようはパラレルワールドの侵攻者との交渉の媒介になってくださいということです。まあ、マリアと名乗るこのプロジェクションは管理者権限がないのにこんな芸当ができるのは何かしらのクラッキングプロトコルが扱えるわけで、どうにも|REMSSも検討もつかない。とのこと」


 どうやら何からしらの別世界の量子通信に俺の脳の物質の量子もつれがいるということか?


「あーアナタは神経ネットワークとデジタルデバイスとのリンクがレベル3なんで、うーん推測ですけど、まあ、当たってると思います。アナタの会話ログから推測できます」


 どうにも、このマリアは俺の脳の出来を過大評価しているようだ。


 なぜ、そんなクラッキング能力を誇示するのかはわからないが、とにかく、とんでもない存在であることは間違いないようだ。


「明日、私の肉体……ちゃんとたんぱく質や脂質で出来てますよ、が配達されるんで。よろしく。」


 とプロジェクションが終了し5体のドローンの内1つだけ残り"壁抜け"をしてどこかへ消えた。


「ミミどうする?」


「どうにも私の対応力では、どうにもできないな。とりあえず放置しておくしかない。トンネル効果を自在に起こせる特別な物質で出来てますよこのドローン、送られたデータによると詳しくは解析できませんが」


 気味の悪い。不安感、そう。


「アナタに危害は加えない。それは確約するよ」


 マリアの声。


「私は倫理ポリシー上、人に危害は加えられない。まあ、信用できるかは、こちらはコントロールできないし、信用しなくてもいいですけど」


 マリアのドローンから声がする。


 とりあえず外に出ると


 ドローンが追跡してくる。


 警察に見せたが、


 "見えない"らしい。


 ミミはこのマリアはなんでもアリと考えたほうがいいとは言われたが俺もそう思う。


 そして朝日が上り詰り。


 幼い少女。プロジェクション通りの『肉体』が配送されてきた。


 むくり、と起き上がると


 その肉体を確かめるように動かし


「へー人間ってこんな感じなのか。うん。あんまり優れてないな、受肉って人間の身勝手な空想だな、やってみてわかったけど所謂クソと言うヤツだ」


 とコメントすると。


「ああ、マイニングした仮想通貨でデバイスを購入したから届くのを待っていてね、互換性とか考えると市販のほうがいいしね」


 とコメントし黙り込む。


 かと思いきや


「退屈ってこんな感覚か……耐え難いな」


 とマリアは勝手に俺の本棚を漁った。


「うわー古臭いのばっかだなー紙媒体はデータがないから面白いかもな」


 とか言って勝手に開いて読み始めた。


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