第25話 招待状


 


 白い、

 封筒だった。


 


 厚みが、

 あり、

 余計な、

 装飾は、

 ない。


 


 だが、

 触れただけで、

 重さが、

 伝わる。


 


 「……国際会議、

 正式招待状」


 


 葛城あきらが、

 淡々と、

 読み上げた。


 


 探索者ギルド、

 本部、

 応接室。


 


 同席しているのは、

 政府代表の、

 桐生。


 


 そして、

 三橋さなえ。


 


 「場所は、

 スイス、

 ジュネーヴ」


 


 「名目は、

 ダンジョン対策、

 国際協調会議」


 


 「実質は……」


 


 葛城は、

 言葉を、

 切る。


 


 「剣神の、

 扱いを、

 決める、

 場だ」


 


 さなえは、

 封筒を、

 見つめた。


 


 剣より、

 重い。


 


 そう、

 感じた。


 


 「……私が、

 行く、

 必要が、

 ありますか」


 


 静かな、

 問い。


 


 桐生は、

 即答した。


 


 「あります」


 


 「あなた抜きで、

 話が、

 進めば、

 もっと、

 不利になる」


 


 「拒否すれば、

 敵対と、

 受け取られる」


 


 正論。


 


 だが、

 冷酷。


 


 レーシャが、

 小さく、

 ため息を、

 つく。


 


 「剣で、

 斬れない、

 タイプの、

 敵ね」


 


 「……はい」


 


 さなえは、

 頷いた。


 


 「分かって、

 います」


 


 学園。


 


 屋上。


 


 夕方の、

 風。


 


 さなえは、

 フェンスに、

 手を、

 かけていた。


 


 遠く、

 街の、

 灯りが、

 点き始める。


 


 「国際会議、

 かぁ……」


 


 羽柴とおるが、

 苦笑する。


 


 「俺なんか、

 場違いも、

 いいとこだ」


 


 「先生は、

 来ないんですか」


 


 「引率は、

 別チーム」


 


 「君は、

 もう、

 学生扱い、

 されてない」


 


 その言葉に、

 さなえは、

 少しだけ、

 笑った。


 


 「……寂しい、

 ですね」


 


 「だな」


 


 短い、

 沈黙。


 


 「怖いか?」


 


 羽柴が、

 尋ねる。


 


 さなえは、

 考え、

 首を、

 横に、

 振った。


 


 「怖くは、

 ないです」


 


 「ただ……

 分からない」


 


 「剣なら、

 相手が、

 見える」


 


 「でも、

 言葉は、

 見えない」


 


 羽柴は、

 真剣な、

 顔で、

 頷いた。


 


 「それでも、

 行くんだろ」


 


 「はい」


 


 即答。


 


 「逃げたら、

 剣神じゃ、

 なくなる」


 


 その夜。


 


 自室。


 


 スーツケースが、

 床に、

 開いている。


 


 制服。


 


 私服。


 


 最低限。


 


 そして――

 剣。


 


 「……持って、

 行きますよね」


 


 レーシャが、

 言う。


 


 「当然」


 


 さなえは、

 刀身を、

 布で、

 拭く。


 


 「これは、

 私ですから」


 


 翌日。


 


 空港。


 


 専用ゲート。


 


 報道陣は、

 遠く。


 


 だが、

 視線は、

 集まる。


 


 「……緊張、

 してる?」


 


 レーシャ。


 


 「少し」


 


 正直な、

 答え。


 


 「でも、

 不思議と、

 剣を、

 握る時と、

 同じです」


 


 「一歩、

 踏み出せば、

 あとは、

 前を見るだけ」


 


 搭乗。


 


 機内。


 


 窓の外、

 雲海。


 


 日本が、

 小さく、

 なる。


 


 「……世界は、

 広いですね」


 


 レーシャは、

 笑う。


 


 「でも、

 あなたが、

 立つ場所は、

 変わらない」


 


 「剣神として」


 


 数時間後。


 


 ジュネーヴ。


 


 重厚な、

 会議施設。


 


 各国の、

 旗。


 


 警備は、

 厳重。


 


 会場に、

 一歩、

 足を、

 踏み入れた、

 瞬間。


 


 視線が、

 集まる。


 


 好奇。


 


 警戒。


 


 計算。


 


 「……これが、

 世界、

 なんですね」


 


 レーシャが、

 囁く。


 


 「ええ」


 


 「そして、

 剣神は、

 今、

 試されている」


 


 壇上には、

 各国代表。


 


 議長が、

 口を、

 開く。


 


 「本会議は、

 剣神、

 三橋さなえの、

 発言を、

 歓迎する」


 


 マイクが、

 向けられる。


 


 さなえは、

 一歩、

 前に、

 出た。


 


 心臓が、

 鳴る。


 


 だが、

 剣を、

 振るう時と、

 同じ。


 


 背筋を、

 伸ばす。


 


 「……私は、

 三橋さなえです」


 


 「剣神と、

 呼ばれています」


 


 会場が、

 静まる。


 


 「私は、

 世界を、

 支配する、

 つもりは、

 ありません」


 


 「守りたい、

 だけです」


 


 言葉は、

 簡単。


 


 だが、

 真実。


 


 「剣は、

 脅すために、

 あるんじゃない」


 


 「切るべき、

 ものを、

 切るために、

 あります」


 


 沈黙。


 


 そして、

 ざわめき。


 


 賛同。


 


 反発。


 


 まだ、

 結論は、

 出ない。


 


 だが、

 始まった。


 


 剣神と、

 世界の、

 対話が。


 


 これは、

 戦いでは、

 ない。


 


 だが、

 負けられない、

 場だ。


 


 三橋さなえは、

 立っていた。


 


 剣を、

 携えた、

 まま。


 


 次なる、

 試練の、

 ただ、

 真ん中で。

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