第26話 言葉の刃


 


 会議場は、

 静まり返っていた。


 


 だが、

 それは、

 安らぎでは、

 ない。


 


 嵐の、

 前触れ。


 


 各国代表の、

 前には、

 マイク。


 


 だが、

 誰も、

 最初に、

 口を、

 開こうと、

 しない。


 


 「……それでは」


 


 議長が、

 声を、

 整える。


 


 「質疑応答に、

 移る」


 


 空気が、

 張りつめた。


 


 最初に、

 手を、

 挙げたのは、

 北欧代表。


 


 白髪の、

 老紳士。


 


 「剣神殿」


 


 穏やかな、

 口調。


 


 「あなたの、

 力は、

 あまりにも、

 大きい」


 


 「個人が、

 持つには、

 危険だと、

 思わないか」


 


 さなえは、

 一拍、

 置いた。


 


 剣を、

 振るう前と、

 同じ。


 


 「思います」


 


 即答。


 


 会場が、

 ざわつく。


 


 「だから、

 私は、

 自分を、

 律します」


 


 「剣を、

 抜く理由を、

 選びます」


 


 「……それを、

 誰が、

 監視する?」


 


 今度は、

 別の、

 代表。


 


 鋭い、

 視線。


 


 「国か、

 組織か、

 それとも、

 神か」


 


 レーシャが、

 苦笑する。


 


 「神は、

 信用、

 されてない、

 みたいね」


 


 さなえは、

 首を、

 振った。


 


 「誰でも、

 ありません」


 


 「私自身が、

 私を、

 見張ります」


 


 「それが、

 剣士です」


 


 強い、

 言葉では、

 ない。


 


 だが、

 芯が、

 あった。


 


 次に、

 発言したのは、

 アジア圏代表。


 


 若い、

 女性。


 


 「もし、

 あなたが、

 暴走したら?」


 


 直球。


 


 さなえは、

 迷わない。


 


 「止めて、

 ください」


 


 「剣で、

 でなくても、

 構いません」


 


 「言葉でも、

 行動でも」


 


 「私は、

 聞きます」


 


 その、

 一言が、

 空気を、

 変えた。


 


 敵では、

 ない。


 


 そう、

 伝わった。


 


 休憩時間。


 


 控室。


 


 さなえは、

 椅子に、

 深く、

 腰を、

 下ろした。


 


 「……疲れた」


 


 本音。


 


 レーシャが、

 肩を、

 叩く。


 


 「剣より、

 ずっと、

 消耗するでしょ」


 


 「はい」


 


 「でも、

 逃げなくて、

 よかった」


 


 ドアが、

 ノックされる。


 


 入ってきたのは、

 アフリカ代表。


 


 屈強な、

 体格。


 


 「少し、

 話せるか」


 


 「はい」


 


 彼は、

 椅子に、

 座らず、

 立ったまま、

 言った。


 


 「我々の、

 国では、

 ダンジョンが、

 街を、

 飲み込んだ」


 


 「軍も、

 間に合わず、

 多くが、

 死んだ」


 


 重い、

 言葉。


 


 「……剣神なら、

 救えたか」


 


 問い。


 


 責任を、

 突きつける、

 刃。


 


 さなえは、

 俯いた。


 


 「分かりません」


 


 正直。


 


 「私は、

 万能じゃ、

 ありません」


 


 「でも……

 助けに、

 行けたかも、

 しれない」


 


 彼は、

 目を、

 閉じた。


 


 「だから、

 頼みたい」


 


 「敵に、

 なるな」


 


 さなえは、

 立ち上がり、

 深く、

 頭を、

 下げた。


 


 「はい」


 


 「約束します」


 


 午後。


 


 再開。


 


 議題は、

 剣神の、

 行動指針。


 


 拘束。


 


 制限。


 


 監視。


 


 次々、

 提示される。


 


 さなえは、

 一つずつ、

 聞いた。


 


 否定は、

 しない。


 


 だが、

 言うべき、

 ことは、

 言う。


 


 「人を、

 守るための、

 剣に、

 鎖は、

 不要です」


 


 「でも、

 暴れるための、

 剣なら、

 縛られて、

 当然」


 


 会場に、

 静かな、

 納得が、

 広がる。


 


 最終。


 


 暫定合意。


 


 剣神は、

 独立した、

 存在。


 


 だが、

 要請が、

 あれば、

 協力する。


 


 強制は、

 しない。


 


 拒否も、

 認める。


 


 完璧では、

 ない。


 


 だが、

 現実的。


 


 会議終了。


 


 拍手は、

 まばら。


 


 それでも、

 確かに、

 あった。


 


 廊下。


 


 さなえは、

 壁に、

 もたれた。


 


 「……生き延びた」


 


 レーシャが、

 笑う。


 


 「今日の、

 勝者は、

 言葉だったわね」


 


 「はい」


 


 「でも……」


 


 さなえは、

 剣に、

 触れる。


 


 「まだ、

 本当の、

 刃は、

 抜いていない」


 


 遠く、

 誰かの、

 視線を、

 感じた。


 


 見えない、

 敵。


 


 静かな、

 敵意。


 


 剣神の、

 存在を、

 許さない、

 者たち。


 


 戦いは、

 終わって、

 いない。


 


 ただ、

 形が、

 変わった、

 だけ。


 


 三橋さなえは、

 歩き出す。


 


 剣を、

 持つ者として。


 


 言葉を、

 知った、

 剣神として。


 


 次なる、

 波乱が、

 待つ、

 世界へ。

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