第23話 剣神、解放
結界が、
完全に、
閉じた。
空気が、
重く、
沈む。
通信は、
遮断。
外界との、
繋がりは、
ない。
「……やってくれたわね」
レーシャの、
声が、
冷える。
「これは、
本気の、
殺し場」
生徒たちは、
壁際に、
集められ、
動けずに、
いた。
恐怖。
震える、
手。
羽柴とおるが、
必死に、
声を、
張る。
「大丈夫だ!
三橋が、
いる!」
その名に、
わずかに、
光が、
宿る。
だが。
魔物は、
容赦なく、
迫る。
四足の、
獣型。
人工的に、
骨格を、
歪められた、
異形。
「……外道」
さなえは、
呟いた。
剣を、
握る。
だが、
動かない。
「どうした?
剣神」
〈影縫い〉の、
男が、
嘲る。
「人質が、
気になるか?」
その、
一言。
胸の奥で、
何かが、
切れた。
「……レーシャ」
小さな、
呼びかけ。
「制限、
解除する」
女神は、
一瞬、
黙り。
それから、
柔らかく、
笑った。
「ええ」
「剣神として、
完全に、
目覚めなさい」
世界が、
反転する。
さなえの、
内側で、
何かが、
解き放たれた。
――剣神、
領域展開。
専門用語――
**剣神領域**。
剣の、
理が、
支配する、
空間。
半径、
数十メートル。
剣を、
持つ者の、
意志が、
物理法則を、
上書きする、
神域。
空気が、
凍る。
魔物の、
動きが、
鈍る。
〈影縫い〉の、
男たちが、
息を、
呑んだ。
「……な、
なんだ、
この圧は」
さなえの、
瞳が、
澄む。
恐怖は、
ない。
怒りも、
ない。
ただ、
決意。
「生徒に、
触れたら……」
剣を、
振り下ろす。
――一閃。
音は、
遅れて、
来た。
魔物の、
身体が、
静かに、
崩れる。
切断面は、
焼けるように、
滑らか。
血は、
飛ばない。
「……消えた?」
生徒の、
声。
答える前に、
次。
――二閃。
――三閃。
連続する、
剣の、
軌跡。
魔物は、
近づく前に、
消滅する。
〈影縫い〉の、
男が、
叫ぶ。
「馬鹿な!
結界が、
機能している、
はずだ!」
レーシャが、
嗤う。
「剣神領域は、
結界の、
上位よ」
「理そのものを、
切っているの」
さなえは、
歩く。
ただ、
前へ。
床に、
影が、
伸びる。
その影が、
刃に、
変わる。
「……影縫いの、
術か」
さなえは、
足を、
一歩、
踏み出す。
――影が、
裂けた。
「なっ……!?」
術式が、
崩壊する。
「術者の、
意志が、
見える」
「だから、
切れる」
冷静な、
声。
剣神は、
語らない。
示す。
〈影縫い〉の、
男たちは、
後退する。
「撤退だ!」
「情報が、
違う!」
だが、
遅い。
さなえは、
床を、
蹴った。
距離が、
消える。
――一瞬。
剣の、
腹打ち。
衝撃のみ。
男の、
身体が、
壁に、
叩きつけられ、
沈黙する。
残る、
二人。
恐怖で、
顔が、
歪む。
「やめろ!
俺たちは、
命令で――」
言葉の、
途中。
さなえは、
剣を、
振らない。
ただ、
視線を、
向ける。
それだけで、
二人は、
膝を、
ついた。
「……帰りなさい」
低く、
静かな、
声。
「次は、
ありません」
剣神領域が、
解除される。
空気が、
戻る。
生徒たちが、
一斉に、
息を、
吐いた。
「……終わった」
羽柴が、
呟く。
だが、
さなえは、
剣を、
納めない。
「まだです」
床に、
手を、
当てる。
歪み。
結界の、
残滓。
――断つ。
剣を、
振り下ろす。
ダンジョンの、
空間が、
悲鳴を、
上げる。
次の瞬間。
外の、
光が、
差し込んだ。
結界、
完全崩壊。
通信、
回復。
外部の、
ギルド隊が、
雪崩れ込む。
葛城あきらが、
さなえを、
見つめた。
「……無事か」
「はい」
短い、
返答。
生徒たちは、
救出され、
泣き崩れる。
さなえは、
一歩、
下がった。
剣神として、
ではない。
一人の、
少女として。
レーシャが、
優しく、
言う。
「よく、
守ったわ」
「うっかり、
じゃ、
済まないくらい、
大仕事」
さなえは、
小さく、
笑った。
「……守れたなら、
それで、
いいです」
だが。
この一件は、
世界に、
はっきりと、
示した。
剣神は、
脅威で、
あると、
同時に。
守護者でも、
ある。
〈影縫い〉の、
計画は、
崩れた。
しかし、
彼らの、
本体は、
まだ、
闇の中。
剣神を、
巡る、
戦いは、
次の、
段階へ、
進む。
それを、
理解しながら。
三橋さなえは、
剣を、
手放さなかった。
世界が、
どれほど、
歪もうとも。
切るべき、
ものは、
見えている。
剣神は、
前へ、
進む。
ただ、
守るために。
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