第22話 罠のダンジョン


 


 探索者育成学園、

 合同実習の、

 告知が、

 出たのは、

 突然だった。


 


 「――都市型、

 新規出現、

 ダンジョン」


 


 掲示板の、

 文字を、

 見つめ、

 生徒たちは、

 ざわめく。


 


 「また、

 急だな……」


 


 「でも、

 上級者向けって、

 書いてあるぞ」


 


 「三橋も、

 参加する、

 らしい」


 


 その名前に、

 空気が、

 一段、

 変わる。


 


 さなえは、

 掲示板から、

 一歩、

 離れた。


 


 胸の奥に、

 小さな、

 違和感。


 


 「……来ましたね」


 


 レーシャの、

 声が、

 静かに、

 響く。


 


 「うん」


 


 視線を、

 落とす。


 


 告知文の、

 最下段。


 


 ――特別監督、

 探索者ギルド。


 


 「ギルド、

 公認……」


 


 「だからこそ、

 怪しい」


 


 レーシャは、

 即答した。


 


 「〈影縫い〉は、

 正面からは、

 来ない」


 


 「舞台を、

 整えて、

 誘い込む」


 


 数日後。


 


 実習当日。


 


 現地は、

 旧湾岸地区、

 再開発予定地。


 


 立入禁止の、

 フェンスの、

 向こう。


 


 歪んだ、

 空間。


 


 それが、

 ダンジョンの、

 入口だった。


 


 「……気持ち悪い」


 


 同行の、

 生徒が、

 呟く。


 


 「都市型は、

 不安定なのよ」


 


 引率の、

 羽柴とおるが、

 説明する。


 


 「内部構造が、

 頻繁に、

 変化する」


 


 「だから、

 実習では、

 深追いは、

 しない」


 


 さなえは、

 無言で、

 頷いた。


 


 入口に、

 立った、

 瞬間。


 


 ――ぞわり。


 


 肌が、

 粟立つ。


 


 「……これは」


 


 レーシャが、

 声を、

 潜める。


 


 「人為的な、

 歪み」


 


 「ダンジョンが、

 誰かに、

 触られている」


 


 内部。


 


 コンクリートの、

 壁。


 


 天井から、

 垂れる、

 配線。


 


 だが、

 進むにつれ、

 現実感が、

 薄れていく。


 


 床が、

 呼吸するように、

 脈打つ。


 


 「……嫌な、

 感じだ」


 


 前方の、

 生徒が、

 立ち止まる。


 


 その瞬間。


 


 ――ガン。


 


 後方の、

 通路が、

 閉じた。


 


 鉄の、

 壁。


 


 「なっ!?」


 


 「出口が!」


 


 混乱。


 


 羽柴が、

 叫ぶ。


 


 「落ち着け!

 隊列を、

 維持しろ!」


 


 だが、

 次の瞬間。


 


 床が、

 崩れた。


 


 「きゃっ!」


 


 数名が、

 下層へ、

 落下する。


 


 さなえは、

 即座に、

 剣を、

 抜いた。


 


 「――全員、

 その場で、

 止まって!」


 


 声が、

 通る。


 


 混乱が、

 一瞬、

 収まる。


 


 「……やっぱり、

 罠」


 


 レーシャが、

 苦々しく、

 言う。


 


 「〈影縫い〉の、

 結界術」


 


 「ダンジョンに、

 別の、

 空間操作を、

 重ねている」


 


 専門用語――

 **結界術**。


 


 外部から、

 内部を、

 制御する、

 高難度の、

 技術だ。


 


 「学園実習を、

 装って……」


 


 さなえは、

 歯を、

 食いしばる。


 


 「生徒を、

 巻き込むなんて」


 


 その時。


 


 闇の、

 奥から、

 拍手が、

 聞こえた。


 


 ぱち、

 ぱち、

 ぱち。


 


 「流石だね、

 三橋さなえ」


 


 姿を、

 現したのは、

 黒装束の、

 探索者。


 


 三人。


 


 全員、

 顔を、

 覆っている。


 


 「歓迎するよ、

 剣神」


 


 声は、

 楽しげ。


 


 「……〈影縫い〉」


 


 さなえが、

 言うと、

 男は、

 肩を、

 すくめた。


 


 「ご名答」


 


 「ここは、

 君の、

 実力を、

 測る、

 試験場だ」


 


 「生徒は、

 どうする」


 


 問い。


 


 「安心して」


 


 男は、

 笑う。


 


 「彼らは、

 餌じゃない」


 


 「人質だ」


 


 空気が、

 凍る。


 


 「……最低ですね」


 


 さなえの、

 声が、

 低く、

 なる。


 


 「誉め言葉だ」


 


 次の瞬間。


 


 床から、

 魔物が、

 這い出した。


 


 人工的に、

 改造された、

 ダンジョン種。


 


 「来ます!」


 


 生徒たちが、

 後退する。


 


 さなえは、

 一歩、

 前に、

 出た。


 


 「全員、

 私の、

 後ろへ!」


 


 剣を、

 構える。


 


 剣神の、

 気配が、

 解き放たれる。


 


 空気が、

 震えた。


 


 「……やっぱり、

 本物だ」


 


 〈影縫い〉の、

 男が、

 呟く。


 


 「だが、

 ここは、

 こちらの、

 土俵」


 


 結界が、

 閉じる。


 


 外部との、

 通信、

 遮断。


 


 完全な、

 孤立。


 


 「レーシャ」


 


 さなえは、

 小さく、

 呼ぶ。


 


 「ええ」


 


 女神は、

 笑った。


 


 「剣神の、

 本領を、

 見せる、

 時ね」


 


 迫る、

 魔物。


 


 人質に、

 取られた、

 生徒。


 


 そして、

 試される、

 剣神の、

 覚悟。


 


 これは、

 単なる、

 実習では、

 ない。


 


 戦争の、

 始まりだ。


 


 三橋さなえは、

 剣を、

 振り上げる。


 


 守るために。


 


 この、

 歪んだ、

 ダンジョンを、

 断ち切るために。


 


 剣神の、

 戦いが――

 本当の、

 意味で、

 始まった。

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