第20話 挑戦者
夜の、
探索者ギルド。
外は、
雨。
ネオンが、
濡れた、
路面に、
滲んでいる。
受付カウンターには、
毛利ゆきなが、
立っていた。
だが、
その表情は、
硬い。
「……来ました」
彼女の視線の、
先。
自動ドアが、
開く。
入ってきたのは、
一人の男。
背が、
高い。
黒い、
コート。
探索者タグは、
隠していない。
ランク表示――
A。
「三橋さなえに、
会いに来た」
男の声は、
低く、
冷たい。
「……面会は、
制限されています」
ゆきなが、
答える。
男は、
口元を、
歪めた。
「挑戦だ」
その一言で、
空気が、
変わる。
ギルド内の、
探索者たちが、
一斉に、
息を呑む。
「剣神狩り、
第一号」
誰かが、
呟いた。
その頃。
さなえは、
訓練室に、
いた。
病院から、
戻って、
まだ、
半日。
身体の、
調子を、
確かめるための、
軽い、
素振り。
――シュッ。
空気が、
裂ける。
「……静かすぎる」
レーシャが、
言う。
「嵐の、
前触れ」
その時。
扉が、
ノックされた。
入ってきたのは、
葛城あきら。
いつもより、
険しい、
顔。
「……来た」
短い、
一言。
「剣神狩り?」
さなえは、
即座に、
理解する。
「名は、
九条 恒一」
「元、
国家直属、
第一級探索者」
「今は、
フリーだ」
その意味を、
察する。
「……断れませんか」
「無理だ」
葛城は、
首を、
振る。
「探索者同士の、
正式な、
挑戦」
「拒否すれば、
弱腰と、
取られる」
さなえは、
目を、
閉じる。
「……分かりました」
剣を、
握る。
迷いは、
ない。
数分後。
ギルド、
模擬戦闘場。
観客席には、
人だかり。
ざわめきが、
止まらない。
「本当に、
来たぞ」
「剣神、
対、
Aランク……」
さなえは、
中央に、
立つ。
制服姿。
対する、
九条は、
無骨な、
槍を、
構えていた。
「……女子高生か」
鼻で、
笑う。
「失望した?」
さなえは、
静かに、
返す。
「いや」
九条は、
目を、
細めた。
「本気で、
斬って、
いい理由が、
できた」
開始の、
合図。
次の瞬間。
――ドン。
床が、
砕ける。
九条の、
突進。
速い。
だが、
さなえの、
視界では、
遅い。
「……甘い」
剣が、
一閃。
――キン。
槍の、
軌道が、
逸れる。
九条の、
目が、
見開かれる。
「なっ……!」
反撃。
連続の、
突き。
風圧が、
観客席に、
届く。
だが。
さなえは、
一歩も、
動かない。
すべて、
最小限で、
捌く。
「……見える」
剣神の、
領域。
動き。
癖。
呼吸。
すべてが、
手に取るように、
分かる。
「馬鹿な……!」
九条の、
焦り。
動きが、
荒くなる。
その、
一瞬。
さなえは、
踏み込んだ。
――ズン。
剣の、
腹。
衝撃のみ。
だが、
それで、
十分。
九条の、
身体が、
宙を、
舞う。
壁に、
叩きつけられ、
動かなくなる。
静寂。
次いで。
どよめき。
「……終わりです」
さなえの、
声は、
落ち着いていた。
医療班が、
駆け寄る。
九条は、
意識を、
取り戻し、
苦笑した。
「……参った」
「剣神は、
本物だ」
その言葉が、
会場に、
響く。
勝負は、
一瞬。
だが、
意味は、
重い。
「これで、
終わりじゃ、
ない」
レーシャが、
囁く。
「挑戦者は、
増える」
さなえは、
剣を、
納めた。
「……構いません」
「私は、
逃げない」
観客席の、
視線。
畏怖。
尊敬。
恐れ。
すべてを、
一身に、
受けながら。
三橋さなえは、
立っていた。
剣神として。
そして、
一人の、
探索者として。
だが、
この勝利は、
始まりに、
過ぎない。
剣神狩りは、
失敗した。
その事実が、
世界を、
さらに、
揺らす。
次に、
来るのは、
誰か。
それを、
彼女は、
すでに、
理解していた。
――もっと、
危険な、
存在が、
動く。
剣神の、
前に。
そして、
戦いは、
個人から、
組織へと、
変わっていく。
その兆しが、
今、
確かに、
芽吹いていた。
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