第18話 帰還、そして評価
光が、
完全に、
収束した瞬間。
世界裂け目は、
跡形もなく、
消えた。
次に感じたのは、
重力。
身体が、
強く、
引き戻される。
視界が、
反転し――。
気づけば、
湾岸地区の、
地面に、
立っていた。
「――戻った!」
誰かの、
声。
騒音が、
一気に、
耳へ、
流れ込む。
ヘリの音。
無線の声。
人のざわめき。
現実だ。
「三橋さん!」
毛利ゆきなが、
駆け寄ってくる。
目が、
赤い。
「……お帰りなさい」
その一言で、
胸の奥が、
少し、
緩んだ。
「ただいま」
短く、
答える。
周囲には、
武装した、
国家部隊。
探索者。
学園関係者。
そして――
カメラ。
距離は、
保たれているが、
視線は、
集中している。
「……完全に、
見世物ですね」
小さく、
呟く。
「仕方ないよ」
レーシャの声。
「世界規模の、
異常を、
一人で、
終わらせたんだから」
担架を、
勧められたが、
断った。
歩ける。
それに――
今は、
自分の足で、
立っていたかった。
簡易司令室。
テントの中。
そこにいたのは、
葛城あきら、
大森喜助、
鷹宮監査官。
全員、
真剣な顔だ。
「まず、
礼を言う」
大森が、
頭を下げた。
「世界裂け目は、
完全に、
消失した」
「二次被害、
ゼロ」
その言葉で、
空気が、
わずかに、
和らぐ。
「……よかった」
それが、
本音だった。
「次に、
評価だ」
鷹宮が、
端末を操作する。
画面に、
数値が、
表示された。
だが――
途中から、
読めなくなる。
「測定不能?」
「そうだ」
鷹宮は、
淡々と、
告げる。
「剣技、
反応速度、
空間干渉率」
「すべて、
既存の、
尺度外」
「……つまり?」
葛城が、
問い返す。
「評価不能」
静かな、
断言。
だが、
それは、
称賛と、
同義だった。
「正式に、
宣言する」
大森が、
前に出る。
「三橋さなえを、
現代初の、
剣神級探索者として、
認定する」
一瞬、
言葉が、
頭に、
入らなかった。
剣神。
その称号を、
再び、
背負うことに、
なる。
「……肩書きは、
必要ですか」
正直な、
疑問。
大森は、
苦笑した。
「世界が、
納得するために、
必要だ」
「君自身の、
ためではない」
「世界の、
ためだ」
納得した。
剣は、
個人の、
ものではない。
振るえば、
世界に、
影響する。
「分かりました」
頷く。
鷹宮が、
一枚の、
文書を、
差し出す。
「追加契約だ」
内容は、
簡潔。
――剣神級は、
原則、
単独行動。
――国家は、
干渉しない。
――だが、
世界的危機には、
協力義務が、
発生する。
「……合理的ですね」
署名する。
これで、
正式に、
立場が、
確定した。
テントを出ると、
夕焼け。
空は、
裂けていない。
当たり前の、
光景。
それが、
なぜか、
胸に染みた。
「……疲れましたね」
「うん」
レーシャも、
同意する。
「でも、
いい顔してる」
その時。
少し離れた場所で、
視線を、
感じた。
鋭い。
敵意に、
近い。
振り向く。
そこにいたのは、
一人の男。
探索者装備。
年齢は、
二十代後半。
だが、
目が、
笑っていない。
「……誰?」
レーシャが、
警戒する。
男は、
小さく、
口角を上げた。
「剣神、
か」
呟き。
「面白い」
それだけ言って、
背を向けた。
名も、
所属も、
不明。
だが――
確実に、
危険な、
気配。
「……芽が、
出ましたね」
さなえは、
小さく、
息を吐く。
「うん」
レーシャの声が、
少し、
重くなる。
「剣神が、
現れた以上、
挑む者も、
出る」
「人も、
世界も」
夕焼けの中、
さなえは、
剣に、
手を置いた。
恐怖は、
ない。
ただ、
覚悟が、
ある。
「……望むところです」
守ると、
決めた。
世界も。
日常も。
そして――
自分自身も。
剣神、
三橋さなえ。
その名は、
救済の象徴として、
広がり始める。
同時に――
嫉妬と、
敵意も、
呼び寄せながら。
物語は、
次の局面へ、
静かに、
進み出した。
戦いは、
もう、
異界だけの、
ものではない。
人の、
心こそが、
次の、
戦場になる。
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