第2話

今日の夕飯は、久しぶりに三人揃った食事になった。

普通、母は遅くまで仕事に出ているし、俺も俺でバイトに行くから、三人揃うことは滅多にない。

妹には寂しい思いをさせているだろうな、と思う。

パパ反省。

けれど、少しでも母に楽をしてほしいと思えば、バイトの数を減らすわけにはいかないのだ。

パパを許せ。


紗希も紗希で、思うところがあるのだろう。

妹は、今時の娘にしては珍しいほど積極的に家事に取り組んだ。

おかげで家が荒れることはないし、いつでも美味しい食事が提供される。

「紗希が作るハンバーグが、一番美味しい」

「世界一?」

「うん、三つ星シェフも真っ青」

「へへへ」

決しておべんちゃらなどではない。

心からそう思っている。

俺の一言に、妹はほっと胸を撫で下ろした。

「可愛い妹の手ごねハンバーグが不味いわけがない。手ごねだぞ、手ごね」

万感を込めている。

混じり気のない、ピュアな、本心だ。

それなのに、それまで嬉しそうに目を細めていた紗希の表情が、スンッと消えた。

「おにい、まじキモい」

なぜだ。

紗希の目からハイライトが消えている。

しかし、そんなジト目をしていても俺の妹は可愛い。

可愛いしか言えない俺の語彙力が憎いほどに可愛い。

「毎日食べたいくらい美味いッ! 毎日俺のハンバーグを手ごねしてくれ!」

「うわキッショ」

「えー、母さんは紗希の肉じゃがも食べたーい」


今日も我が家は平和だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る