俺は妹のパパになると決めた日から、ずっとキモい。

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第1話

16年前、俺は妹のパパになった。

まるで覚えちゃいないのだが、俺が生まれた日、俺の父親は「女の子がよかった」とほざいたらしい。

一晩以上かかって、文字通り死に物狂いで出産した母に向かってそのような言葉をかけるのだから、父親の人格は推して測るべしというものだ。

そして、5年経っても娘を授かることができなかった時、母と俺と、紙切れ一枚を置いて出ていった。

その時俺はたった5歳の、幼稚園の年中さんだ。

自分で言うのもなんだが、可愛い盛りだったはずである。

母の想いもまた、推して測るべし、だ。


ところが俺は、今となっては父親に対して「ふざけんな」という思いもありながら、「ざまぁみろ」という思いを同居させている。

なぜならば──


「おにい! また私のプリン勝手に食べた!?」


俺には5歳年下の、可愛い妹がいるからだ。

柔らかい髪をしゃらしゃら揺らしながら、ぷりぷり憤慨している。

淡いベージュに染めたボブヘアーが、朝日に照らされて艶っぽく光っていた。

実に美しい。

あまりにも美しいから、天使が俺をお迎えに来たのかと、毎朝思う。

いや、女神か? まて、むしろこの悪魔的な可愛さは堕天使という可能性も──

まあ、とにかく俺の妹は可愛いのだ!


「あんたまた、紗希のおやつ勝手に食べたの?」

出勤の準備をしている母が、天気予報の感想でも呟くかのように言った。

その、マスカラを塗る時に鼻の下を伸ばす癖はどうにかならないのだろうか。

「おいしかった」

「ふざけんな! 名前書いてたのに!」

ふふ、牛のような鳴き声を上げる妹もまた一興。


父親が出ていってから数日後、母が妹を懐妊していたことが分かったのだ。

「ざまぁみろ」だ。

女の子が〜とほざいていたアイツは、間違いなくロリコンだ。

出ていってくれて良かった。


しかし。

当時の、幼くも聡明な俺は気付いてしまったのだ。

妹には、「父」がいないのだと。

それはとても、寂しいことかもしれない、と。


だから、俺はあの日決意した。

妹のパパに、俺はなる!


「悠斗まじキモい!」


そして、俺は、妹のパパになると決めた日から、ずっとキモい。

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