第16話「進化への道」
---
名前をもらってから、狩りの効率が劇的に変わった。
ドロルが大物を狩る。
私がそれを食べる。
《経験値を獲得しました》
同じ経験値が、私にも入る。
「最高……!」
『そんなに違うのか』
「全然違う!今までの三倍くらい入ってる!」
ドロルは、少し驚いた感情を見せた。
『名前の力は、想像以上だな』
「ほんとにね」
私たちは、狩りを続けた。
ドロルが狩り、私が食べる。
私が狩り、私が食べる。
どちらでも、しっかり経験値が入る。
---
三日後。
《レベルが10になりました》
「やった!」
ついに、レベル10。
進化の条件を満たした。
《進化条件を満たしました》
《進化先一覧》
1. フライ
2. ポイズンフライ
3. スカベンジャーフライ
「前と同じ選択肢だ」
『どれにする』
「ポイズンフライ。毒特化で行く」
私は、迷わず選んだ。
《ポイズンフライに進化します》
体が、光に包まれた。
熱い。
でも、痛くはない。
体が作り変えられていく感覚。
大きくなる。
強くなる。
そして。
《進化が完了しました》
光が収まった。
「おお……」
体が、一回り大きくなっていた。
翅も、前より頑丈になった気がする。
『変わったな』
ドロルが、私を見た。
『前より、毒々しい色になった』
「ひどい言い方……」
でも、自分で見ても分かる。
体の色が、より鮮やかになっていた。
紫がかった黒。
毒を持つ者の色だ。
《ステータス》
名前:ペステル
種族:ポイズンフライ
レベル:1
HP:60/60
MP:35/35
攻撃力:18
防御力:12
素早さ:38
スキル:
飛行Lv4/複眼Lv5/共食絆Lv2/危機感知Lv4/消化液Lv4/腐食毒Lv4/毒耐性Lv3/感応Lv2
「全部上がってる……!」
ステータスが、大幅に上昇していた。
HPは60。
攻撃力は18。
素早さは38。
前の倍近い。
『良かったな』
「うん!」
私は、嬉しくて飛び回った。
体が軽い。
速い。
前とは、全然違う。
「これなら、もっと大きな獲物も狩れるかも」
『調子に乗るな。進化したばかりで、体に慣れていないはずだ』
「分かってる分かってる」
でも、嬉しかった。
やっと、一歩前に進めた気がした。
---
「ねえ、ドロル」
『なんだ』
「ドロルも進化できるの?」
『……どうだろうな』
ドロルは、自分の体を見た。
『ウェルミスがいるせいで、普通の進化はできないかもしれない』
「普通の進化?」
『俺の体は、常に喰われ続けている。それが進化にどう影響するか、分からない』
「じゃあ、進化したら……」
『ウェルミスも一緒に変わるのか、それとも拒絶されるのか。試したことがないから、分からない』
ドロルの感情に、微かな不安が混じっていた。
進化は、未知の領域。
普通の魔物でさえリスクがある。
ウェルミスを抱えたドロルにとっては、さらに不確定要素が多い。
「怖い?」
『……少しな』
正直な感情が伝わってきた。
『だが、いずれは試さなければならない。このままでは、いつか限界が来る』
「一緒に考えよう」
『?』
「私も進化したばかりだから、色々分かることもあるかもしれない。ドロルが進化する時、一緒にいるから」
『……ありがとう』
ドロルの感情に、温かさが混じった。
「お互い様でしょ」
『ああ。そうだな』
---
進化した夜。
隠れ家で、並んで休む。
「ねえ、ドロル」
『なんだ』
「ウェルミスって、いつか出ていくことはないの?」
『……分からない』
ドロルは、自分の腹を見た。
『こいつは、俺の中で生きている。俺を喰いながら。俺が死ねば、こいつも死ぬ』
「共倒れ、ってこと?」
『ああ。だから、こいつは俺を殺さない程度に喰う。俺は、喰われた分だけ再生する』
「バランスが取れてるんだね」
『そうだな。奇妙な均衡だ』
ドロルの体が、小さく痙攣した。
ウェルミスが動いているのだろう。
「痛い?」
『いつものことだ』
「……慣れる?」
『慣れない』
即答だった。
『痛みには、慣れない。毎日、同じだけ痛い』
「……」
『だが、それでいい。痛みがあるから、俺は強くなれる。痛みがあるから、俺は生きている』
ドロルの感情に、覚悟があった。
痛みを受け入れた者の、強さ。
「ドロルは、強いね」
『お前もだ、ペステル』
「私?」
『お前は、小さな蠅だ。本来なら、すぐに喰われて終わりだった。だが、諦めなかった。一人で生き延びた』
「……」
『それは、強さだ』
私は、少し照れくさくなった。
「お互い様、ってことで」
『ああ。そうだな』
私たちは、静かに目を閉じた。
明日も、狩りがある。
明日も、生き延びる。
二人で。
---
《ステータス》
名前:ペステル
種族:ポイズンフライ
レベル:1
HP:60/60
MP:35/35
攻撃力:18
防御力:12
素早さ:38
スキル:
飛行Lv4/複眼Lv5/共食絆Lv2/危機感知Lv4/消化液Lv4/腐食毒Lv4/毒耐性Lv3/感応Lv2
---
進化した。
また一歩、強くなった。
でも、まだまだだ。
「次の進化を目指そう」
私は、そう心に決めて眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます