第7話「失敗と学び」
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狩りを始めてから、一週間が経った。
順調だった。毎日、二匹か三匹の小さな獲物を仕留めていた。
経験値は順調に溜まり、レベルは6になった。
「いい感じ……」
そう思っていた。
調子に乗っていた、とも言える。
その日、私は少し大きめの獲物を見つけた。
毛虫。私の二倍くらいのサイズ。体には細かい毛がびっしり生えている。
「……いけるかな」
今まで狩った中で、一番大きい。
でも、動きは遅そうだ。毛虫特有の、のろのろとした動き。
「やってみるか」
私は、いつものように天井から急降下した。
毛虫の頭を狙う。一撃で仕留める。
いつも通りの作戦——
のはずだった。
着地した瞬間、異変に気づいた。
「——っ!?」
痛い。
体中が、痛い。
毛虫の毛に触れた部分が、焼けるように痛む。
「なに、これ……!」
毒だ。
毛虫の毛には、毒がある。
知識としては知っていた。でも、この世界の毛虫にも当てはまるとは思わなかった。
「くそ……!」
口吻を突き刺そうとする。でも、痛みで集中できない。
毛虫が体をくねらせた。私を振り落とそうとしている。
「離れ……ない……!」
必死にしがみつく。でも、毒の痛みで力が入らない。
振り落とされた。
地面に叩きつけられる。
「がっ……」
HP:18/18 → 12/18
毒のダメージと、落下のダメージ。一気にHPが削られた。
毛虫がこちらに向かってくる。遅いけど、確実に。
「逃げ……ないと……」
翅を動かす。飛び上がる。
毛虫から離れる。
「はぁ……はぁ……」
天井に張り付いて、私は息を整えた。
体がまだ痛む。毒が残っているのか。
《状態異常:毒》
HPが継続的に減少します。
「うそ……」
ステータスを見ると、HPがじわじわと減っている。
HP:12/18 → 11/18 → 10/18
「まずい、まずいまずい……」
どうすればいい。毒を消す方法は——
分からない。
とにかく、隠れ家に戻ろう。安全な場所で、毒が抜けるのを待つしかない。
私は必死で飛んだ。
体が重い。毒のせいで、思うように動けない。
「もう少し……もう少し……」
隠れ家が見えた。
飛び込む。天井の窪みに体を押し込む。
HP:8/18 → 7/18 → 6/18
「止まって……お願いだから……」
減り続けるHP。
このまま死ぬのか。あんな毛虫に負けて。
「嫌だ……死にたくない……」
HP:5/18 → 4/18
「お願い……」
HP:3/18 → 3/18
止まった。
毒が、消えた。
《状態異常:毒 が解除されました》
「……助かった」
ギリギリだった。あと少しで死ぬところだった。
「……馬鹿か、私は」
自分を罵る。
調子に乗っていた。勝てると思い込んでいた。
相手のことを、ちゃんと観察していなかった。
毛虫の毛に毒があるかもしれない。そんな当たり前のことを、考えていなかった。
「……反省」
今回の失敗から学んだこと。
一、見た目で判断しない。
二、未知の相手には、まず観察から。
三、毒を持つ相手には、近づかない。
「毒耐性、取っておけばよかった……」
レベルアップ時に選べたスキル。あの時、危機感知を選んだ。
間違いじゃなかった。危機感知のおかげで助かったことは何度もある。
でも、毒耐性があれば、今回の失敗は防げた。
「次のレベルアップで、毒耐性を取ろう」
決めた。
生き残るためには、弱点を潰さないといけない。
「……今日は休もう」
HP3じゃ、狩りなんてできない。
隠れ家で、回復を待つしかない。
「情けないな……」
でも、生きている。
失敗したけど、死ななかった。
それだけで、十分だ。
「次は、失敗しない」
私は体を丸めて、目を閉じた——閉じられないけど、意識を落とした。
明日には、HPは回復しているだろう。
そうしたら、また狩りを再開する。
今度は、もっと慎重に。
「学習、学習……」
失敗から学ぶ。それが、弱者の生き方だ。
強者は失敗しても力でねじ伏せられる。
でも、弱者は一度の失敗で死ぬ。
だから、失敗から学ばなければいけない。同じ過ちを、二度と繰り返さないように。
「……おやすみ」
誰にともなく呟いて、私は眠りに落ちた。
明日も、生き延びるために。
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