中学生の髪のはなし(本題)

 前振りで書いた通り、かつて兵庫県神戸市のほとんどの中学校には、男子は長さ5mm以下の丸刈りにしなければならないという校則があった。


 当然ながら、これくらいすぐに伸びる。1週間ほどでオーバーするため、いちいち散髪屋というか理髪店に行っていたらキリがない。というか金銭的な負担が大きい。

 だから入学直前に母が電動バリカンを買って、伸びてきたら刈る、というふうにしていた。

 ほかの生徒たちがどうしていたかは知らない。というか、みんな同じようにバリカンを家に持っていると思い込んでいたのでわざわざ聞かなかった。


 カクヨムコンのネタを考えていて、中学校の頃の話をエッセイにしようと思った。 

 書いている途中で、同じような状況で小説が書けるかと言う疑問が浮かんだ。

 まあ小説ならば、キャラの名前を書けばなんとかなるだろう。

 というか、読者も丸刈りであることを忘れてしまうかもしれない。



 じゃあ、漫画だったら?


 漫画家・和月伸宏先生は、かつてスキンヘッドの書き分けに挑戦したと単行本で読んだことがある。

 実際、代表作である『るろうに剣心』の作中には、10人近いスキンヘッドの人物が登場する。

 ただ、すぐ退場する雑魚敵であり、さすがにレギュラー化はしなかった。

 さすがに漫画ではそれくらいが限界で、半分女子としても1クラスだけで約20人、学園物ならクラス以外も書かないといけない。


 漫画家の先生を馬鹿にする訳ではないが、すぐに破綻するだろう。


 顔のパーツを工夫すれば、書き分けは可能だろうが、角度や表情が変われば、同一人物かどうかもわかりづらくなる。

 なにより、読者にとってストレスとなるだろう。


 しかし、現実世界において自分も含む生徒たちは、3年間の同級生と部活の関係者など百人前後をちゃんと見分けていた。


 丸刈りという、数十年前とは言え理不尽な校則のもとでも、そこには確かに自分たちの青春があった。


 自分たちは卒業後、高校に進学して髪を伸ばし始め、数カ月で短髪になった。

 社会人になり同窓会もあったが、髪の伸びた学友たちを普通に見分けることもできた。


 そして時は流れ、Wikipediaによると1995年に神戸市の中学校から丸刈りの校則は全廃されたそうだ。

 とっくに卒業していた筆者は知らなかったのだが、そこに至るまでにもいろいろな物語があったのだろう。

 最近、通りすがりに見かけた後輩たちも普通の髪型であった。


 その1995年は、阪神淡路大震災のあった年である。

 自分も被災したが、今回の本筋とは関係がなく、思い出したくないこともあるので詳しくは割愛させていただく。

 また、年代がバレそうなので少しぼかしている部分もある。今回の話をまじめに考証すると、あれ? 前後関係おかしくないか? となるかもしれないが、ご容赦頂きたい。

 丸刈り全廃と震災に何か関係があるかというと、それも不明である。


 そして、震災のせいで同窓生たちもバラバラになり、同窓会も行われなくなった。


 今、かつての同級生たちは髪を伸ばし、あるいは もしかしたら少し薄くなって、同じ空の下で生きているのだろう。

 SNSなどを見てもなかなか見かけないが、できればまた同窓会など開きたいものである。


 

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中学生の髪のはなし 広瀬涼太 @r_hirose

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