第3話「地下研究所」
中央階段を、地下へ、さらに地下へと、ファイサルとアビーは足早に駆け下りていく!
背後からは、漆黒のローブを纏った魔導士たちが、執拗に魔弾を放ちながら、常に一定の距離を保って空中から襲い来る!
敵の数は、少なくとも七、いや八か!やはり、この旧魔導研究所の地下室には、何か重大な秘密が隠されているに違いない。
敵の追跡は切りがない。ファイサルは踊り場に素早く身を翻すと、共に駆け下りてきたアビーに冷静な声で命じた。
「時間を稼いでくれ! やむを得ません!」
「王のフレアを!? そんな、止めてください! 貴方まで失ったら、ガランは本当に終わりです!」
アビーの悲痛な叫びが、狭い階段に木霊する。
「ギリギリでコントロールするしかない! 後は……」
アビーは、懐から取り出した魔道具を掲げて、強烈な閃光を放った。
「ライト!」
その一瞬の隙を突き、ファイサルは掌に集めた光のエネルギーを解放した。眩い光球は、無数の光の矢となって四方八方に拡散していく。
「ショット!」
光の矢は、闇に紛れていた黒衣の魔導士たちの体を正確に射抜き、彼らは悲鳴を上げる間もなく地面へと落ちていった。
「済まない、アビー」
肩で激しく息をするファイサル。やはり、通常の魔導士との戦闘は、彼にとって大きな負荷を伴う。ガランの王族は本来、強固な防御結界を張ることに特化している。
攻撃的な魔導は、どうしても消耗してしまうのだ。王都シャリシャを襲撃したあの忌まわしい銀龍を、辛うじて追い払った国王の『フレア』。
彼は魔力をほとんど使い果たし、再起不能の状態に陥ってしまった。 第一王子ファイサルは、意識を保てるぎりぎりの線を見極め、光の矢を拡散させるという苦肉の策を用いた。その判断力と魔力制御は、やはり王位継承者。
いや、今は感傷に浸っている場合ではない。この陰鬱な施設の最深部には、間違いなく不吉な何かが潜んでいる。
迂闊だったのだ。『例の壁』の存在など、王子に報告すべきでなかったのだ。アビーは、今更ながら自身の迂闊さを深く呪った。そもそも、いわくつきの「旧・魔導研究所」に、危険が潜んでいないはずなどなかったのだ。
動乱勃発以降、意識不明の重体となった国王の全権代理として、若き第一王子ファイサルは、その強い責任感から、今回の突発的な単独行動を開始したのだった。
そして、予想通り、地下には目を覆いたくなるような悲しい空間が広がっていた。無数の牢獄には、異形な姿をしたキメラたちが閉じ込められている……。
「敵」の真の意図は、「魔導」の力を使える「動物」を作り出すことだろう。
だが、なぜ?
『魔導は人間にしか習得できない』
その事実は、百年前に勃発した大戦の最中、人間と酷似した吸血鬼を判別するための凄絶な試みの中で、既に明らかになったはずなのに。
ふと目をやると、薄暗い牢獄の中に置かれた、真新しい鏡があった。その鏡の中には、どこか見覚えのある幼い子供が、まるで眠っているかのように静かに横たわっている。これは一体……?
紅き炎は王を選ぶ――王とは血か、覚悟か。それとも炎か しゃぼの @shabono
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