第2話 魔のティータイム
午後1時。王宮、中央庭園。
無慈悲な太陽が、手入れされた芝生と、豪奢なドレスに身を包んだ女王、そしてその脇に控える二人の男を照らし出していた。
「……気温26度。湿度上昇中。最悪のコンディションだ」
ゲイルは額を伝う汗を拭うこともできず、低い声で唸った。
彼の右手は、女王エルザの右乳房という名の肉の要塞の底に深く、深く食い込んでいる。
「泣き言を言うなよ、ゲイル。陛下が久しぶりに外の空気を吸いたいと仰ったんだ。僕たちは最高のエア・サスペンションになればいい」
左側でジュリアンが微笑むが、そのこめかみには青筋が浮いている。
屋内と違い、庭園の地面は不安定だ。芝生の微細な凹凸、砂利の沈み込み。その全てが振動となり、女王の巨大な双丘へと伝播する。
「あ……」
エルザが小さくつまづいた。
その瞬間、重低音が二人の鼓膜を揺らす。
「第3級波動、来ます!!」
ゲイルが叫ぶ。
歩行の衝撃で、32キロの脂肪と魔力の塊が、放物線を描いて跳ね上がろうとしたのだ。
ゲイルの手のひらの中で、世界が歪む。
あふれんばかりの肉が、指の間から逃げ出そうと暴れる。それはまるで、生きた巨大なスライムだ。重力に従って垂れ下がろうとするベクトルと、歩行による慣性がぶつかり合い、エルザの胸は恐ろしいほど複雑な形状変化を見せる。
「逃がすなッ! 吸着しろ!!」
「分かってる! ……くっ、なんて弾力だ!」
ジュリアンが左手の指を、鷲の爪のように曲げて食らいつく。
シルクのドレス生地が悲鳴を上げ、その下の柔肌が指の形に凹む。だが、即座に凄まじい反発力で押し返してくる。
指が沈む。吸い付く。
汗ばんだ皮膚と皮膚が密着し、卑猥な湿った音を立てた。
「ふぁ……っ! 激しい……っ」
エルザが、衝撃と、二人の男に同時に強く掴まれた刺激で、甘い声を漏らす。
振動によって擦れるトップが、ドレスの裏地を突き上げ、硬く尖り始めているのが、支える二人の腕にも伝わってくる。
どうにかティーテーブルに到着した一行。
ここからが本番だ。
着席。それは、重力との全面戦争を意味する。
「座ります」
エルザがゆっくりと腰を落とす。
太ももが椅子に触れ、上半身の体重が腰に落ち着く。すると、行き場を失った胸の質量が、すべて下へ――つまり二人の手のひらへと落ちてくる。
ゲイルの手のひらと、太ももの付け根の間に、巨大な乳房が挟み込まれる形になる。
たわんだ肉が、横へ、下へと広がる。
まるで焼きたてのパンケーキ生地のように、とろりと広がる白肉。ゲイルの武骨な手は、その圧倒的な柔らかさに包囲され、完全に埋没した。
(熱い……ッ! 密閉されて、温度が上がっている!)
谷間の湿度が臨界点に達している。
胸下から滲み出る汗が、ゲイルの手相の溝を伝って流れ落ちる。それは極上のローションのように、摩擦係数を極限までゼロに近づけていく。
「滑るぞ、気を付けろ!」
「分かってる! ……ああっ、なんてことだ。座ると形が変わって、さらに柔らかさが増している……!」
ジュリアンが恍惚と苦悶の入り混じった表情で、左手を震わせる。
座った姿勢では、胸は重力で垂れるのではなく、太ももの上で揺蕩う状態になる。
それは液状化した欲望そのものだ。少しでも力を緩めれば、テーブルの上に胸が零れ落ちてしまうだろう。
「紅茶を……いただくわ」
エルザが右手を伸ばす。
最大の危機、
カップを取るために上半身が前に傾く。当然、ぶら下がった胸は振り子のように前方へ飛び出そうとする。
「支えろオオオオオッ!!」
「いなせエエエエエッ!!」
ゲイルは右乳の底を掌底でカチ上げ、ジュリアンは左乳の側面を包み込んで遠心力を殺す。
エルザの前傾に合わせて、胸が形を変える。
重みが一点に集中する。ゲイルの中指と薬指に、全体重がかかる。
指が、肉に溺れる。
柔らかいなんて生易しいものではない。指の関節が逆側に反るほどの圧力なのに、触れている感触はマシュマロよりも儚い。
エルザが紅茶を一口飲む。
喉が動く、その微細な振動さえも胸へと伝わり、肉が震える。
「……んッ」
熱い紅茶を飲んだせいで、女王の体温がさらに上がる。
ゲイルの手のひらに、心拍が直接叩きつけられる。
張り詰めた血管。薄い皮膚の下で脈打つ、生命の奔流。
あまりの密着度に、ゲイルは自分が女王の右乳そのものになったような錯覚に陥った。
(この重み……この熱さ……。俺の手は、もう俺のものじゃない……陛下の一部の肉だ……)
汗でぬるぬると滑る乳房を、必死に握り直す。
ギュッ、と肉が指の隙間からあふれ出し、悲鳴のような粘着音を立てる。
その刺激に、エルザの吐息が荒くなる。
「ふぅ……。二人とも、手が……熱いわ。そんなに強く握られると、なんだか……胸の奥が、痺れてくるの」
「耐えてください陛下! 今、手を離せば、このテーブルごと吹き飛びます!」
「もっと優しく! でも力強く! 矛盾を愛してください陛下!」
ゲイルとジュリアンは、汗だくになりながら叫んだ。
端から見れば、優雅にお茶を飲む美女の脇で、二人の男が必死の形相でその胸を揉みしだいているだけの狂気の光景。
「……美味しかったわ。さあ、部屋に戻りましょう」
カップを置いたエルザが微笑む。
そして、無邪気に立ち上がった。
解放された重力が、再び二人の腕に牙を剥く。
圧縮から解放への急激な変化。
跳ね上がった乳房が、二人の顔面をかすめるほどの勢いで波打った。
「ぐおおおッ!!」
ゲイルの右肩から、ミシミシと嫌な音がする。
だが、離さない。離せるものか。
その手には、国一番の柔らかさと、国一番の重責が残っていた。
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