第70話 トーナメント、開戦。
「――第一試合、対戦相手入場。」
多死Rossの宣告と同時に。
対面のゲートが、ゆっくりと開いた。
中から5人の神界人が出てくる。
五人は、笑いながら翔馬達を見下ろしていた。
「見ろよ……明らかに雑魚そうだぜ」
「ククッ……初戦は余裕で通過だな」
「ハッ、まだ一回戦だろ?
全員で体力削るより――」
一人が、後ろを振り返る。
「一番強いお前が、まとめてぶっ殺しちまえよ」
その言葉に応じるように、
一人の男が前に出た。
――いや、“男”と呼んでいいのか分からない。
上半身は人型。
だが下半身は、明らかに異形だった。
硬質な甲殻に覆われた脚。
関節の節は異常なまでに太く、
大腿部からは蟹の歩脚が幾重にも連なっている。
その腰には、
不気味な器具が装着されていた。
器具の刃が、鈍く光る。
「……何だ……あいつ……あいつも神界人なのか……?」
翔馬が、思わず声を漏らす。
だが次の瞬間――
「来たァァァ!!」
「始まり野一族だ!!」
「初戦から当たりだぞぉ!!」
コロシアムが、爆発した。
翔馬が不思議そうに無闘に顔を向ける。
「おい無闘……始まり野一族って何なんだよ?」
「は?お前無い野から知らされてなかったのか?お前もその一族じゃねえのかよ」
「一族って……どういう事だ?」
「始まり野一族っていうのはな、生まれながらにその身に祝福が刻まれ、絶大な才能が約束されたエリートの一族だよ。名前の最後に野がつくのが特徴だ。」
観客席の神界人達が総立ちになり、
狂ったように叫び始める。
「下界人は餌だァ!!」
「脚をもげぇ!!」
「血を見せろォ!!」
翔馬は無闘の話に驚きながらも、口を開く。
「最後が野って……それって与志野とか田野も始まり野一族って事かよ?」
「いや、下界人には基本的に始まり野一族は居ない、祝福も下界人には使えないんだ。
だからこそあの神界高校の奴らはおかしかった。」
熱狂の中で、
異形の男は愉快そうに肩をすくめた。
「おいおい……随分ビビってるじゃねぇか」
器具に手をかけ、
無い野を見下ろす。
「下界人代表は……お前だろ?」
無い野は、無言だった。
ただ、ゆっくりと前に出る。
「無い野……か、どっかで聞いた名だな。
お前も始まり野一族かよ?」
一歩。
また一歩。
その足取りには、
焦りも、恐怖も、怒りすらない。
異形の男が、眉をひそめる。
「……チッ。
下界人の癖になんだその目」
無い野は、ようやく口を開いた。
「………一つ質問がある。」
「は?」
「あの5人の中で……」
静かな声。
「お前が一番強いのか?」
「ハッ……当たり前だろ、俺は始まり野一族だぞ。」
「うおおおおおお!!」
コロシアム全体が、血に飢えたような熱狂に包まれる。
その怒号を――
一つの声が、強引に押し潰す。
『――さぁさぁさぁ!!』
拡声された甲高い声が、
結界越しにコロシアム全体へ響き渡る。
無い野達は声の主に目をやった。
宙に浮かぶ実況席。
そこには、派手な仮面を被った司会者が立っていた。
『第27回!神界七天神トーナメント!!
記念すべき第一試合の開幕でございます!!』
観客席が、再び爆発する。
『下界より招かれし――
無謀か、はたまた奇跡か!!』
司会者は腕を大きく広げる。
『先鋒!!
下界代表――
無い野ッ!!』
ブーイングと罵声。
「殺せぇぇぇ!」
「死ねぇぇぇ!」
だがそれを楽しむかのように、司会は笑う。
『対するはァ!!』
声色が、一段高くなる。
『高貴なる血統!始まり野一族より――!!』
スポットライトが、
異形の男を照らす。
『蟹甲殻類大腿部歩脚身取り出し器具野(かにこうかくるいだいたいぶほきゃくみとりだしきぐの)!!』
観客席は総立ちだった。
「来たァ!!」
「脚を取れぇ!!」
「初戦から目玉だぞ!!」
無闘は若干引き気味で呟く。
「何なんだあいつ……てか名前長過ぎだろ……」
花野がそれに続いた。
「名前はともかくあいつの雰囲気……実力は本物っぽいね」
司会は、愉快そうに手を叩く。
『ルールは簡単!!
武器あり!
神の気あり!
動かなくなった時点で決着!!』
翔馬達の背筋が、凍る。
『なお、チームが全滅した場合――』
司会の声が、
一瞬だけ、低くなる。
『多死Ross様により即・処刑でございます!』
そして、満面の笑み。
『それでは選手の皆様――
覚悟は、よろしいですかァ!?』
無い野は、何も答えない。
ただ、静かに立つ。
蟹の異形は、器具を鳴らしながら嗤った。
「早くしろよ司会者。
俺の刃が、ウズウズしてんだ」
司会は高らかに叫ぶ。
『――結界、完全閉鎖!!』
光の壁が、闘技場を包む。
コロシアムの中と外が断絶された。
一対一。
『第一回戦!!
先鋒戦!!』
一拍。
全ての音が、消えた。
『――――開始!!』
鐘の音が、鳴り響いた。
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