第41話 MODE終点マジキチ野
Fが地面に叩きつけられ沈黙したその瞬間、
空気から完全に“音”が消えた。
最初に駆け寄ったのは無闘だった。
「F!! おい……しっかりしろ!!」
その声は震え、焦りと後悔と怒りが混じっている。
続けて田野、花野、与志野が駆け寄り、
Fの胸に耳を当てた田野がかすれた声で言った。
「……まだ息はある……!」
Fの腕は不自然な方向へ曲がり、
蒼の気の流れは途切れ途切れ――
まるで今にも“消えそうな線香花火”のようだった。
無闘が歯を食いしばる。
「……クソッ……!俺の判断ミスだ……!」
その言葉を遮るように、
蒼黒の影が彼らへ歩み寄る。
無い野。
彼は静かにFの元へ向かい
無造作に腕を持ち上げた。
「……終わらせるか。」
その声には、情も怒りもない。
ただ“業務”のような冷たさだけがあった。
「テメェッッッ!!!」
無闘が飛び込んだ。
無い野の腕と無闘の拳がぶつかり、
爆風のような衝撃が荒野を薙ぎ払う。
花野と当て野も同時に動いた。
「当て野!!」
「分かってる……!!」
無い野は、無闘の攻撃を躱しながら静かに言った。
「勝ち目はないだろ。」
無闘はFを背に庇いながら叫ぶ。
「ハァ…ハァ…!この馬鹿を殺させるかよ!!」
(クソ……!一発も当たらねえ!身体も限界だ…!俺がMODE反転を温存しとけば……!」
無い野はわずかに首を傾ける。
「哀れだ。」
「うるせえ!!!」
その叫びに、無い野の表情が初めて“人間らしい”動きを見せた。
ほんの少しだけ、目を細める。
「……理解不能だな。」
だが無闘はある希望を見出していた。
「――今なら勝てる。」
無い野の動きが止まる。
無闘は続けた。
「Final Formは……発動した瞬間、
体内の蒼の気を全部燃やし尽くす“最終技”だ。
いくらお前でも……今なら蒼の気も空っぽのはずだ!!」
花野も当て野も、
わずかに希望の光を見出し拳を握りしめた。
だが――
無い野はゆっくりと笑った。
「……ああ、その理屈は……正しい。」
無闘達が無い野を囲み構える。
しかし。
無い野は言葉を続けた。
「だが……一つ計算違いがある。」
「……何……?」
その瞬間、
無い野の身体の奥――“肉体そのもの”が脈動した。
蒼黒ではない。
蒼でも黒でもない。
もっと深い、“核”の脈動。
「MODE終点……この技は蒼の気をより上手くコントロール出来るように作り替える反転とは違い肉体そのものを蒼の気の源にする技だ。
故にこの身体にはエネルギー切れはない。」
耳で理解するより先に、
荒野の地表が震えた。
無闘が息を呑む。
(……今の脈動……蒼の気の……生成!?)
つまり――
無い野の蒼の気は尽きていない。
いや、尽きるという概念そのものが存在しない。
「蒼の気が尽きない……その意味は分かるな?」
無闘は理解した瞬間、血の気が引いた。
「自らの肉体を犠牲にした蒼の気の無限生成……!!?」
与志野が蒼ざめながら震える声を絞り出す。
「そ、そんなの……反則……だろ……」
無い野は上機嫌で答える。
「勿論デメリットは幾つかある。
無限生成とは言ったもののやはり肉体を犠牲にしている訳だ、あまり生成し過ぎると元の身体に戻れなくなる……まあ他にも解除後の隙や時間制限……まだ色々あるが……」
無い野が冷たい笑みを浮かべた。
「今この場でお前達を殺すのには不自由しないな。」
無闘が歯を噛み砕く勢いで叫ぶ。
「ふざけんな!!
じゃあ今の“Final Form”の大技も……
ダメージゼロみたいなもんじゃねえか!!」
「ゼロではないさ。
肉体は損傷した。」
一瞬だけ、自身の腕を見る無い野。
だが。
その腕はすぐに“蒼の再生”を始めた。
皮膚が、筋肉が、骨が――
蒼の奔流とともに形を取り戻す。
まるで自然治癒の速度が
“理不尽に1000倍に引き伸ばされた”かのように。
無闘は顔を歪める。
「……そうか……!肉体を蒼の気にする……!
不死身って訳かよ……!」
無い野はゆっくりと歩みを進める。
「お喋りは終わりだ。」
無い野が動こうとした瞬間花野が地面へ両手を叩きつけた。
「Flower Garden――森柱大樹ッ!!」
無い野の真下から、
大地を裂き巨大な木が“爆発するように”生え上がった。
その幹は戦車ほど太く、
無数のツタが無い野へ向かい一気に絡みつく。
無闘と当て野が同時に地を蹴った。
「今だっ!!!」
「ッッ!!」
二人の拳が無い野へ迫る。
ツタが無い野の腕、脚、胴を縛りつけ――
大樹がその巨体を押し潰すように締め付ける。
無闘の拳が迫り、当て野の蹴りが振り下ろされ――
その瞬間。
無い野の身体から“白蒼の閃光”が炸裂した。
バァァァァァァァァン!!!!!!
大樹が爆発四散し、
ツタが一瞬で蒼に焼かれ、
花野が後方へ吹き飛ばされる。
「ぐうぅぅッッ!!」
無闘と当て野も直撃を喰らい、
地面を転がりながら十数メートル先まで吹き飛ぶ。
「ぐっ……あ……!!」「がはっ……!!」
無い野は煙の中から一歩歩み出た。
身体から上がる蒼の気は“濃度”そのものが異常。
もはや霧のように周囲へ充満している。
「……言ったろう。
“MODE終点”は無敵だ。」
その言葉は、
絶望を告げる鐘のように響いた。
無闘達が倒れた地面の奥で、
翔馬だけが――わずかに目を細めていた。
無い野が気づく前に。
翔馬の足元の蒼が、
微かに、確かに、
“形”を作り始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます