第35話 人格分裂決戦3

吹き飛ばされた花野を見て、無い野はゆっくりと息を吐いた。


「次は──誰だ?」


その言葉に答えるように、木々の影から一人が飛び出す。


与志野だった。


拳に蒼の気を纏わせ、死角から一気に踏み込む。


「thousand finger!!!」


蒼光の連打が無数の刃となり、無い野の背後へ殺到する。


無い野は振り返りもせず、冷たく言った。


「……お前には興味がない。」


その瞬間、無い野の身体がフッと横にずれ──

回避しようとした、まさにその時だった。


バキィッ!!


与志野が拳を地面へ叩きつけた。


その直下の大地が大きく割れ、

無い野の足元の土が“崩れ落ちる”。


「……!?」


わずかに体勢が傾いた。


ほんの一瞬──

しかし、致命的とも言える“隙”。


「今だ翔馬!!」


与志野の声と同時に、蒼の紋章が地を走る。


「Quattro Step!!!」


翔馬の姿が青い残像と化し、

無い野の胸元へ拳を叩き込む。


――ドガァッ!!!


「……っ!!」


だが無い野は腕を交差し、その拳を受け止めた。


「甘い。」


無い野が亜里野にカウンターを仕掛けようとしたその瞬間。


ヒュッ……!!


空気を裂く音と共に、

“蒼の気をまとった小石”が無い野の側頭部へ飛来した。


ガンッ!!!


「っ……!?」


本来なら容易に防げるはずの投石。

だが先ほどの体勢の崩れが残っていたのか、

無い野はその石を完全には防げなかった。


当たった瞬間、わずかに顔が揺れる。


与志野が息を呑む。


(ただの石が……弾丸みてぇな威力だ……!)


無い野がゆっくりと投石方向を見る。


「そうだったな……お前が一番厄介だ。」


「来いよ無い野。」


当て野がゆっくり前へ歩く。


「俺の攻撃は……絶対に外れない。

 お前も分かってるだろ。」


無い野の表情がわずかに動く。


「………。」


当て野は拳を構えた。


「俺の祝福──

 《sniper》。

 “俺の攻撃は、対象に必ず当たる”。」


風が止まった。


次の瞬間、


当て野は無い野へ真っ直ぐ突っ込んだ。


無い野の拳が当て野へ襲いかかる。


ぶんッ!!


スレスレで当て野が回避。


その直後、

当て野の拳が無い野の胸へ吸い込まれるように命中する。


ドッ!!


「……チッ。」


無い野は一歩下がる。


当て野は畳みかける。


左、右、アッパー、ローキック──

すべてが必中。


ビシッ!バシッ!バキッ!!


翔馬はその様子に驚愕する。


(すげえ……!無い野の攻撃をギリギリ躱しながら反撃まで……!)


無い野の頬がわずかに歪んだ。


「面白い。」


そして──


無い野の拳が閃いた。


「っ──速ッ…!」


当て野でも反応が遅れた。


(しまっ──)


直撃する──その瞬間。


「──捕まえた!!」


田野の叫び。


田野の足元から光の鎖が伸び、

当て野の身体を強引に後方へ引き寄せた。


「my only girl Friend!!」


同時に花野のツルも絡みつき、

二つの力が当て野を強制的に後退させる。


無い野の拳は空を裂き、地面を大きく抉った。


当て野は地面を転がりながら息を整える。


「……助かった……!」


花野が震えた声で叫ぶ。


「当て野!!無理しすぎだ!!」


無い野は拳を下ろし、

ゆっくりと三人を見渡した。

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