第28話 蒼の気の質

──3日後。


神界高校では、翔馬たちの姿がないまま

体育祭は強引に決行され、

学年の誰もが“何かがおかしい”と感じながら終わった。


そして土日を跨ぎ──月曜日。


校門前はざわついていた。


「なぁ……あの三人、今日も来てないのか?」


「てか抹殺斗とフンペチが救急車で運ばれたのマジだったの?」


「てか多い死先生も途中から居なかったよな…。」


「だよな、金曜日何があったんだろうなー。」


生徒たちの噂が渦巻く中、

当の本人たち──亜里野翔馬、与志野音色、田野──は学校とは別の場所にいた。



その日の昼過ぎ。


人気のない山奥の空き地。

岩と木々に囲まれた、簡易な修行場のような空間。


無闘が腕を組んで立ち、

翔馬と与志野、田野を見下ろした。


「じゃ、今日から本格的に始めんぞ。」


翔馬が深く息を吐く。


田野が小さく言う。


「……学校、休んでるけど本当に大丈夫か……?」


Fがその背後からヒョコッと顔を出した。


「大丈夫大丈夫!

 一日ぐらい休んでもなんも言われないって!」


「お前この前無断欠席しすぎて担任に注意されてたよな……」

無闘がツッコむ。


無闘は気にせず続けた。


「まず、お前らに伝えとく。」


無闘は指を一本立てる。


「抹殺斗とフンペチは──死んでねぇ。」


翔馬が眉をひそめる。


「田野が……治したからだろ。」


「あぁ。

 ただし暴走の危険があるから完全には治してねぇ。

 今は病院で拘束されてる。」


田野は申し訳なさそうに言う。


「……あの二人、本当は全回復させたかったんだけど…あん時は前に回復させすぎて疲労してたし…

意識取り戻したらまた暴れるかもだしな。」


無闘は軽く肩をすくめた。


「まぁ今は置いとく。

 向こうは当分戦線復帰できねぇ。」


翔馬は少しだけ安堵の表情を浮かべる。


(良かった……あの二人も……死んでなかった……)


Fが唐突に言う。


「じゃあさ、翔馬くん。

 “君の中”から出ていった人格のこと、覚えてる?」


翔馬は無言で首を横に振る。


「……全然。」


「だよね。

 あれ、多分“人格”というより──

 祝福でできたなんかに近い存在だよ。」


「祝福……?でも俺の祝福は…」


無闘が手を叩いた。


「とにかく。

 今のお前に必要なのは──“蒼の気のコントロール”だ。」


翔馬が真剣な表情になる。


「……教えてくれ。」


無闘はにやりと笑い、地面を拳で叩いた。


ズガッ!!


大地が揺れ、砂埃が舞う。


「いいか翔馬。

 お前の蒼の気は────」


無闘は翔馬の胸に軽く手を添えた。


「規格外だ。」


翔馬の心臓が大きく跳ねた。


「規格外……?」


「多い死に蒼気……

 あの二人並み、もしくはそれ以上の気の“質”を持ってる。」


与志野が驚く。


「え……翔馬が……?」


無闘は言葉を続けた。


「だが使い方が壊滅的だ。

 そのせいで身体が先に壊れるし速攻で蒼の気も使いきっちまう。」


翔馬は抹殺斗戦を思い出し拳を握る。


「……分かってる。」


無闘は頷き、二人に向かって言った。


「だからこれから教えるのは──

 蒼の気の流し方、固定法、爆発法、そして遮断法。

 お前らが神界の奴らと戦うために必須の技術だ。」


Fが翔馬の隣にしゃがむ。


「ちなみに与志野くんと田野くんもやるよ。

 田野くんは特に、祝福を使うための“土台”として。」


田野が驚く。


「え……俺も?」


「うん。君の祝福はサポート系。

 だから体力がないと一番に潰れる。」


田野は苦笑しつつ、拳を握った。


「……まあ…確かに。」


無闘は両手を叩き、号令をかける。


「では──

 修行開始だ。」


翔馬が深く息を吸う。


(蒼気先生……

 俺は、あんた達の正体を確かめる。)


(そして……絶対に負けない。)


無闘がニヤリと笑う。


「翔馬……覚悟しとけ。

 地獄を見るからな。」


そんな中──


何処かの高層ビルの屋上。

何者かが都市を見下ろしていた。


小汚いフードを被り、その少女は呟く。


「……止めないと……この世界の……終焉を……」


突風が吹き少女のフードが取れた。


「……この世界も……神界も……私が守る。」


彼女の目が細まる。


この日から──

亜里野翔馬たちの本当の鍛錬が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る