第21話 奥の手
鉄くずの山に衝撃が響く。
フンペチの無表情な顔がゆらりと揺れ、次の瞬間にはすでに距離を詰めていた。
「終わりです。」
その一言に、殺気がまとわりつく。
与志野は指先を蒼く染め、全神経を集中させて迎撃する。
ガンッ!!
指と手刀が激突し、倉庫全体に火花が散る。
(くそ……速さが段違いだ……!
“遊び”は完全に終わったってわけかよ……!!)
田野が蒼の光に包まれた少女とともに後退する。
「与志野……! 無理すんな!」
「無理しねぇと死ぬんだよ!!」
与志野は歯を食いしばり、再び指を構えるが——
フンペチの蹴りが脇腹を捉えた。
「ぐっ……!!」
鉄骨へと吹き飛び、肩口を抉るほどの衝撃が走る。
田野が叫ぶ。
「与志野!!!」
フンペチはゆっくり、無表情のまま歩く。
「つらそうですね。」
その瞬間、与志野の背中に冷たい汗が流れた。
(……マジで殺される……!!)
だが——
田野が前に躍り出た。
「させるかよぉおおぉッッ!!」
少女が田野の横に並び、光の壁を張る。
フンペチは一切の表情変化なく、手刀をそのまま振り下ろした。
バキィィッ!!
光の壁が砕け、田野の身体が浮く。
「痛っ!!」
壁に叩きつけられ、口から血を吐く。
それでも田野は立ち上がる。
「俺が……時間を稼ぐ……
お前は——やれ与志野……!」
与志野はその声に、奥歯を強く噛みしめた。
(こいつ……ここまで……!
だったら俺も……全部出すしかねぇ!!)
与志野の手が蒼く膨れあがる。
——ビリビリビリッ!!!
空気が震え、蒼の気が指先に“吸い込まれていく”。
フンペチの足が止まった。
「……まだ何かあるんですか。」
与志野が低く呟く。
「《revolver fingerリボルバー・フィンガー》」
蒼の気が“弾丸のように”指の周囲に纏わりつく。
通常なら蒼は拡散し、指のような細い部分に極集中など不可能。
だが——
与志野には、それを可能にする“繊細なコントロール能力”があった。
フンペチは無表情ながら、わずかに首をかしげる。
「その蒼の圧……。
あなた、コントロールの才能がありますね。」
与志野は指を震わせながら笑う。
「知るかよ。」
バチバチと青い電流のような蒼が指先を走る。
田野が必死に叫ぶ。
「与志野に近づくな!!」
少女が光の紐を伸ばし、フンペチの腕を捕縛する。
しかし。
ズバッ!!
一瞬で切り裂かれた。
田野の顔が歪む。
「クッソ!!」
フンペチが田野の胸に拳を撃ち込む。
「あなた、邪魔です。」
ドガァッ!!!
田野が床を転がる。
「ゥ………!!!アッアァ……!!!」
息ができない。
肋骨がきしむ。
それでも——立ち上がる。
「……my……only……girl Friend……!」
フンペチの目がわずかに細くなる。
フンペチが田野の首に手刀を向けた瞬間。
「——田野!! 離れろ!!!!!」
与志野の叫びが倉庫全体に響き渡る。
指先は蒼の気を極限まで装填し終え、青白い光が脈動している。
指が銃口のように輝いていた。
与志野は腕を振り抜く。
「行けぇええええええッッッ!!!
《thousand finger》!!!」
——だが、いつもとは違う。
revolver fingerによって圧縮された蒼の気が、
解放と同時に“弾丸の嵐”のように暴れ出した。
ドドドドドドドドドドッ!!!!
蒼の弾が一直線にフンペチへ襲いかかる。
フンペチの目が初めて見開かれた。
「……っ!」
構える暇もない。
蒼の嵐がフンペチの身体を貫き、
金属を破壊するような轟音が廃材置き場に響き渡る。
倉庫の奥の壁が、蒼の衝撃で粉々に砕けた。
田野は倒れこみながら、笑う。
「……やった……か……?」
与志野は肩で息をしながら、指先から煙を出していた。
「っは……
これが……《revolver finger》……
そして——俺の全力だ……」
粉塵の中、フンペチの姿はまだ見えない。
だが確かに、奥の壁ごと吹き飛ばした。
粉塵がゆっくりと晴れていく。
壁はえぐれ、床は割れ、
蒼の弾丸が通った軌道だけが直線の廃墟となっていた。
「すげえ……なんて威力だ……!」
田野は息を荒げながら呟く。
与志野は指先を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。
「くそ……指が痛え……」
その言葉と同時に。
——コツ、コツ。
粉塵の奥から歩く足音。
現れたフンペチの全身には、蒼の衝撃による裂傷と焦げ跡が刻まれていた。
制服は破れ、腕は痙攣し、
呼吸もわずかに乱れている。
だが——その目は曇りなく冷たい。
「……驚きました。
この私に……ここまで損傷を与える人間がいたなんて……」
田野は叫ぶ。
「まだ生きてやがんのかよ……!!」
フンペチは服に付いた砂を軽く払う。
「与志野音色君……本当に強いです。
ですが誤解しないでください。」
その表情は、いつもと同じ“無”。
「私はまだ《祝福》を使っていません。」
与志野と田野の顔が一気に強張る。
「……は?」
フンペチは両手を見つめるようにゆっくりと上げた。
「本来、戦闘に使う必要がないので……封印していました。
ですが……あなた達は“思った以上”でしたし……」
目線が二人を捕らえる。
「あなた達を殺すため……使用することにします。」
空気が急激に冷え、
まるで世界そのものが縮んでいくような圧迫感が漂う。
与志野は歯を食いしばる。
「何しやがる気だ……!」
フンペチは淡々と告げた。
「私の祝福は——」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます