第8話 本番
校舎を半壊させた戦いから数秒。
静寂のような、しかし確実に“悪意だけが歩いてくる”気配があった。
足音はゆっくり。
だが、その一歩一歩が空気を抉る。
「……ふーん。やるじゃねえか、うちの二匹を倒すなんて...修行の成果見せれてよかったな。」
煙の向こうから現れたのは、黒いフードを羽織った青年。
四天王・YOU died。
口元だけが異様に笑っていた。
「で?英雄気取りの三人さん。
いま校舎がどうなってるか、分かってる?」
翔馬たちは構えたまま無言で睨む。
「死んでるよ?」
YOU diedは心底うれしそうに笑った。
「何十人も。“文化祭の事故”って扱いになるだろうけどね。
あぁ、怪我人もいっぱい。泣き叫んでた。
いやぁ〜すごい地獄だったよ?」
その言葉で、翔馬の瞳の奥で何かが切れた。
「……てめぇ……!」
与志野も低く唸る。
「人の命をなんだと思ってんだ……」
田野は拳を震わせ、少女がその背を支えるように寄り添った。
「何が事故だよ……
お前が壊しただけじゃねぇか……!」
YOU diedは鼻で笑う。
「壊した?違うよ。
“壊れるように仕向けただけ”。
俺は罪は犯してないってこと……分かる?」
「ッ!!」
翔馬が一気に地面を蹴った。
「double step!」
与志野も重なるように突撃する。
「thousand finger!」
田野の少女が二人の加速を補助し、三方向から同時に攻め込む。
三対一——
だがYOU diedの笑みは崩れなかった。
「——“FPS”。」
空気が弾けるような音がして、
YOU diedの手に“重火器”がずらりと出現した。
アサルトライフル。ショットガン。ハンドガン。
すべて無から形を成し、まるで息をするように構えられる。
「YOU...died。」
次の瞬間——
銃声が三方向に散った。
「避けろ翔馬!!」
「クッ……!」
ドドドドドドドドドドドドッ!!!
跳弾、爆風、連射。
距離を詰める前に、三人は押し戻される。
翔馬が高速で踏み込むも、YOU diedの照準はブレない。
「ハハハッ!逃げろ逃げろー。」
ダンッ!!
「ぐっ……!」
翔馬は弾丸を腕で受け、吹き飛ばされた。
骨にひびが走る感覚。
「ぐぁ...しまった...一発...喰らった...」
与志野が隙を狙って指を伸ばす。
「thousa——ッ!?」
YOU diedはショットガンを捻り上げるように構え、
ゼロ距離で衝撃を与える。
ドゴッ!!
「うわっ……!!」
与志野の指がショットガンに擦り辛うじて照準から外れた。
田野も少女と共に距離を詰めようとするが——
「後ろで援護してろよ、サポート君。」
YOU diedが軽く手を振ると盾のような物が少女に激突する。
少女の身体が弾かれたように吹き飛び、田野も膝をついた。
完全に防戦一方。
射撃の嵐に、三人は近づくことすらできない。
YOU diedは歩きながら銃を入れ替え、笑う。
「一ヶ月鍛えてこれかよ、これじゃあ待った意味もなかったな。」
翔馬は唇と腕から血を垂らしながら立ち上がった。
「馬鹿かお前、力の差は歴然だろ。
さっさと諦めて死ねよ。」
「勝てないと...分かってても...お前を野放しにはできない...!」
片腕からの出血を抑えながら翔馬が答える。
一瞬、YOU diedの表情が止まった。
銃口は翔馬に向いたまま——だが目だけが揺れる。
「ヒーロー気取りかよ、きもち悪い。」
YOU diedの手が、わずかに震えた。
声が重なる。
別の誰かの言葉が、耳の奥で反響した。
——やめろ優大!
——分かってるよ...勝てないなんて...でも...
YOU diedの笑みが一瞬だけ消えた。
まるで“記憶の奥の誰か”に呼びかけられたように。
翔馬が目を細める。
「.....?」
YOU diedはその問いを振り払うように、乱暴に銃を構え直した。
「……っ、なんでもねぇよ。
続きしようぜ?
勝負はこれからだろ。」
だがその瞳の奥だけが、なぜか揺れていた。
そして——
戦いはさらに苛烈へと加速していく。
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