第9話 チラつく

銃声が降り注ぐ。

爆ぜる火花、砕ける瓦礫、跳弾が地面を穿つ。


YOU diedの“FPS”は、まさに一人で戦場を作り出す祝福だった。

三人は距離を詰めるどころか、息をするだけで精一杯。


「ハァ……ハァ……クソッ……ほんとに化け物かよ……!」


翔馬は肩で息をしながら、YOU diedの銃撃を紙一重でかわした。


「どうした?

 さっきまでの勢いは?左腕とサメの時はもっと余裕があったぞ。」


冷たい笑みとともにYOU diedが銃を切り替えるたび、

空中に“存在しなかったはずの武器”が生まれ続ける。


だが——


与志野が、地面に転がる空薬莢に目を留めた。


「……待て翔馬。

 あいつ……さっきから……」


翔馬も同時に気づく。


(武器を出すタイミング……必ず“数秒の間”が空く……!?)


YOU diedが銃を乱射した直後、

ほんの短い間、彼は武器を切り替えられない。


まるで——

“リロードでもしているような”動き。


「……なるほどな。無から武器を作るとはいえ、

 連射直後は“クールタイム”があるってワケか……!」


翔馬が言うと、YOU diedは僅かに眉を動かした。


「……へぇ。よく見てんじゃん。」


「俺が隙を作る!!」


田野が前に出る。


「翔馬……今だろ!行け!!」


田野の少女が蒼の光を背にまとい、翔馬の足に追い風のように力を与える。


「待て、田野ッ!お前じゃ正面は……!」


「わかってる!

 でも……俺も、何もしないわけにはいかねぇんだよ!!」


YOU diedが銃を構え直す。


――だが弾倉は空。


その瞬間を逃さず、与志野が割って入った。


「thousand fingerrrr!!!」


その連撃はいとも容易く盾に弾かれたがYOU diedの視界を防ぎ時間を稼ぐには十分だった。


「行け翔馬ァァァ!!」


YOU diedが指を鳴らし、次の武器が構築されようとする。


しかし0.5秒。

ほんの0.5秒だけ、生成が間に合わない。


三人は、その“刹那”に懸けた。


青白い少女の手がYOU diedの持つマシンガンに届いた、その瞬間。


ドガァァン!!!


YOU diedの蹴りが田野の腹に直撃した。

少女が受け止めるが衝撃は逃がしきれず、田野は失神。


「田野!!」


「気にすんな……いけ……翔……馬……」


田野が倒れる。


同時に与志野も、YOU diedの手榴弾で吹き飛ばされた。


「ぐっ……は……ッ!!」


瓦礫に叩きつけられ、動けない。

二人とも、戦闘不能。


YOU diedはつまらなそうに言った。


「結局こうなるんだよ。

 三対一でしか勝負できねぇ雑魚どもが。」


翔馬は唇を噛んだ。


だが次の瞬間、踏み込んでいた。


「まだ俺がいる!!」


YOU diedの目が見開く。


「馬鹿の一つ覚えだな亜里野!!慣れたぞ!俺なら反応できる!!」


double step


翔馬の姿が消えた。


「ッ……今……だ……ッ!!」


右足に蒼光が奔り、空気が裂ける。


「格好の的だな...!亜里野!!!」


YOU diedが笑いながら自身の手元のマシンガンの引き金を引く。

だが玉は出なかった。

「なっ...!?」


そんな筈はない、このマシンガンは生成したばかりの物...そこまで考えた所でYOU diedは気づく。


「田野か!!!」


そうか!少女が俺の武器に触れた時!「my only girlfriend」が俺のマシンガンに細工しやがった!


「最高だ田野...!」


翔馬の身体が弾丸のように直進し——


ドゴォォォォッ!!!


踵がYOU diedの頬に直撃した。

衝撃波が周囲の瓦礫を吹き飛ばす。


YOU diedの身体が横に流れ、地面に叩きつけられた。


「っ……が……!」


翔馬は着地し、肩で息をしながら続ける。


「人を...殺して...笑ってんじゃねえぞ...!」


YOU diedの瞳が揺れる。


その揺れは、痛みではない。

誰かの声が、脳裏に割り込む。


翔馬が追い打ちのように叫ぶ。


「お前は俺が倒す!!」


YOU diedの視界が揺らぐ。


「田野を...少しみくびったな...そこまで精密な動きができるとは思わなかったよ。」


——立てよ優大。

——お前は俺が倒す!


あの声が、顔が、手が。


「あーイライラする.....」


YOU diedは頭を押さえ、歯を食いしばった。


「チラつくなぁ!!」


YOU diedが再び大量の武器を生成する。


翔馬は構え直した。


「お前……」


YOU diedは何も言わなかった。


ただ、記憶の奥で誰かが——

今にも名前を呼ぼうとしていた。

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