⓪-3 アウローラ
ラーレが暮らしている拠点は、アウローラと呼ばれている。
アウローラの拠点はコンクリート造りで、戦災孤児や訳あって軍を抜けた人々で構成されている。戦場に駆り出される傭兵団。ラーレはそう解釈していた。
そんな拠点の中の一室、レイスの部屋には必要最低限のものしか置かれていない。窓一つない部屋の一角に、一つの写真立てが置かれている。ラーレとレイス、そして初老の男性が映っていた。
初老の男性は、二人が所属しているこの拠点の所長である。ラーレにとっては父親代わりだ。所長は先日殺されてしまった。撃った相手は、眼帯をしている男であったというが、噂の域を出ない。自然と指に力が入り、ラーレは口元を歪ませた。
自分にも誰かを守れる力さえあれば、そう何度も悔やんだ。
レイスはぼんやりと写真立てを見つめているラーレに気付いた。今のままでは、レイスにただ守られるだけの弱者になってしまう。
それが堪らなく、憎い。
「写真、ラーレにあげましょうか?」
「……ううん、レイスが持っていて」
所長はラーレに優しく、父親の代わりだった。レイスは苦笑いを浮かべると、前髪をふわりと耳にかけた。毛先の跳ねたラーレの髪と違い、レイスの髪は短いストレートだ。所長が殺された日に、レイスはその長い髪を切ってしまった。
静かすぎる日常だった。
拠点にけたたましく警報が鳴りだしたのは、それからすぐのことだ。
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