第3話 偉大な先人達よ


「おい、そこのものそちらを少し恵んでくださるか」


タケルと籠を二人で持っていると後ろから突然の掛け声に驚いたまま、男は話しを続けた。


「拙者、大野治元と申す

すまぬが、そちらの名前もお伺いしてもよろしいか、いかんせんここがどこか分らなくてな」


「お侍さんか、タケル聞いたことあるか?」


「聞いたことないよ、お侍さんだね

僕の名前はタケル、隣は相馬だよ」


「お侍さん、びっくりしないでね

ここはあなたがいた戦国時代ではないんです」


大野治元はキョトンとした顔を見せたまま

口を開けたまま首を傾げる。


「あの、俺はあなたがいる時代よりももっと未来を生きているんです」


「未来って言葉は当時ないから、後生です」


「後生のものか、通りで髪も伸ばしたままか

それより……」


大野は、唇の潤いを気にしながらも

籠をマジマジと見つめる。

それを差し出すと、大野は嬉しそうに頬張った。


「いやー、すまないこれは恩に着る」


俺は不思議とこの状況を楽しんでいた。

タケルも少しニヤつきを隠せずに大野を眺めていた。


21世紀を生きる俺

22世紀を生きるタケル

詳しくは分からないが戦国時代を生きる大野治元


交わる事のない時代が、一度交わった時

それは進化退化などでは表せない

人間模様が生まれるのだ。



「いやぁ〜そこのもの達、おやお侍さんもいるね、ここはどこだ教えてくれるか」


おしゃれなハットを被り、革のトレンチコートを着る紳士の佇まいをする男が俺たちに近づいた。


俺とタケルは先程大野に説明した内容を説明した。


「よく分からないが、辺りを見渡す限り

どうやらそうらしいね、私は昭和33年から来た」


男の名前は清と呼ぶ、見た目は中年であろう。

いかにも経験を積んだ見た目をしている。


もうすっかり西日は沈み

そろそろ寒さが訪れた。


俺達は清さんに焚き火の方法をレクチャーしてもらい、そこで暖を取ることになった。





みんなでそれぞれの時代の話をした、

大野の話は今では考えられない話だったが

タケルと清は頷きながら時々相槌を打つ。

2人は歴史好きなのだろうか。

全く話に理解ができなかった


話が止まったのは

後ろの茂みから物音が聞こえた時だった。


「何者だ!」


大野は鞘に収めた刀を取り出し物陰の方へ刀を向けた。


「イノシシちゃうか、、、」


「いや、清さんイノシシがこんな夜に海の方へ来ないでしょそれに縄文時代っていうのは」


「タケル、言ってる場合じゃないよ今は」


全員が固唾を飲んで茂みただ一点を見つめた。

その静寂を破ったのは案外以外なものだった


「なんなの、ここはどこなり〜」


重たい着物を着た平安貴族の女性が

あまりにも似合わない砂浜の上をよちよち歩く


「あら、暖かい、暖を取らせていただくわ」


平安貴族は美しい…いや雅な振る舞いで

俺とタケルの間に座る、それぞれの特等席に座り

軽く自己紹介や説明をする。


「あのー、平安貴族さん?」


なんて呼び名だ、自分でもそう思う。


「どうしましたの、相馬殿」


「えっ、そんな呼び名で反応できんの?」


タケルと清は、ビックリした表情で笑いながら俺を見つめ

大野は一人、知らない単語である平安という言葉を何度も口ずさみ理解できぬままであったが

清が説明を入れたことで理解したのか

時代劇でよく見る高笑いをした。




その後、清のとある提案が俺達を現実へ戻させる事になった。



「盛り上がってるところ、すまない

この中で代表を決めるのはどうかね?」


「拙者も、大将を決めるのはいいと思う」


「そうか、リーダーか、」


如何にも考えていそうに、顎に手を置きしかめている。


提案は一理あるものだった、この非現実の状況は確かに楽しいものだったが

脱出をしたいことは変わらなかった。



「ここは順当に年齢から考えるに私が代表はいかがかね?」


「清、拙者はお主の歳を知らん」


「大野さんの言うとおりだよ、みんな時代が違うのに年齢という軸で考えるのは違うと思うよ」


「じゃあ、何で決めるんだ、なんだ?」


「要するにお主はこうなんだろ歳という名分のもと自分が大将になりたいだけだろ

歳で決めるなら時代で決めたほうがいいだろ

拙者は戦乱の世を生き抜いたのだぞ」


「そんな事を言うなら、私は戦争を乗り切ったんだそして復興に向かって馬車馬のように働いた

おい、タケル、相馬、お前たちなら私達の世代の分かるだろ」


「では間を取って、じゃあわらわはいかが?

時代ではわらわのほうがいいものなり」


「女は黙ってろ、代表と言うのはな男がなるんだ引っ込んでろ」


清は目が充血し、立ち上がったまま

平安貴族に指を差し怒鳴った。


「いやいや、清さん男とか女とか関係ない

これだから古臭いんだな〜あんたは」


「タケルな、お前に教えてやる

男が女を守り、女が男を支える当然だろ!!」


「拙者は清の意見は分かる、平安貴族殿は

さっきここに来たばかりだあまり経験がないはずここで大将を任せると大きな負担になる。」


大野は清を擁護すると同時に沈静化へ向かったが

未だにタケルと清の2世紀分の価値観の差がぶつかる。


黙りかねてたが俺は覚悟を決めた。



「みんな、ちょっと待って」


一同が一斉に静まり、俺の方を見つめる。


「今ここで喧嘩をしても喉は渇くし腹も空いちゃう、縄文時代から脱出してそれぞれの時代に戻ろうよ」


「相馬、そうだねありがとうやっと気づけたよ」


「お主やるな初めてかっこいいと思ったぞ」


清も恥ずかしそうに俯き頷く、


「おほほほ、、相馬殿流石であるなりな〜」


喧嘩があっという間に終わり 

籠の中に入っていた木の実をみんなで分け合い食べた。


味のないと思っていた木の実がこんな美味しいなんて思わなかった。


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